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顧客の声を、そのまま企画にしてはいけない

青い抽象空間で波と細い光の軌跡が交差し、「インサイトは、言葉と行動の間にある。」と記したアイキャッチ画像
青い抽象空間で波と細い光の軌跡が交差イメージ
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言葉と行動のズレからインサイトを見つける

新しい商品や広告を考えるとき、多くの企業が顧客の声を集めます。

アンケートを実施する。インタビューで要望を聞く。口コミやSNSの投稿を分析する。顧客を理解しようとする姿勢は、マーケティングに欠かせません。

ところが、集めた回答をそのまま商品や企画へ反映しても、期待した反応が得られないことがあります。

「シンプルな機能で十分」という声に応えて機能を絞ったのに、選ばれない。

「価格を重視する」という回答が多かったのに、実際には高価格の商品が売れている。

「健康のために運動したい」と話していた人が、サービスへ登録しても続かない。

顧客が嘘をついているわけではありません。

人は、自分が何を求め、なぜその行動を取るのかを、必ずしも正確に説明できるとは限らないからです。

顧客の声は大切です。しかし、その言葉を答えとして受け取るのではなく、さらに深く考えるための入口として扱う必要があります。

顧客が話すのは「本当の理由」とは限らない

私たちは自分の選択について尋ねられると、相手にも自分にも理解しやすい理由を説明します。

「価格が手頃だったから」

「機能が充実していたから」

「デザインが好きだったから」

どれも間違いではないでしょう。しかし、実際の選択には、もっと複雑な感情が関わっています。

失敗したくない。周囲からよく見られたい。いままでの習慣を変えたくない。選ぶ手間を減らしたい。将来の自分に少し期待したい。

こうした感情は、本人にとっても言語化しにくいものです。社会的に望ましくないと感じる理由や、矛盾して見える気持ちは、なおさら語られにくくなります。

だから、インタビューで得た発言だけを整理しても、顧客が実際に動く理由には届かないことがあります。

顧客の言葉を疑うのではありません。

その言葉が生まれた背景に、どのような感情、状況、習慣があるのかを考えることが重要です。

ニーズとインサイトは同じではない

ニーズとインサイトは、混同されることがあります。

ニーズは、顧客が必要としているものや、解決したい課題です。

時間を節約したい。健康になりたい。仕事を効率化したい。安心して眠りたい。こうした欲求は、比較的言葉にしやすいものです。

一方、インサイトは、そのニーズがあるにもかかわらず、なぜ特定の選択をするのか、あるいは、なぜ行動できないのかを理解する手がかりです。

たとえば、「運動を続けたい」というニーズがあっても、人は運動そのものを嫌っているとは限りません。

できない自分を毎回確認することがつらい。周囲と比べられる場所へ行きたくない。準備に手間がかかると、始める前に気持ちが途切れる。

こうした心理が見えてくれば、必要なのは「運動の効果をもっと説明すること」ではなく、「できない自分を責めずに始められる体験」かもしれません。

インサイトとは、印象的な一言を見つけることではありません。

顧客の行動を止めたり、特定の選択へ向かわせたりしている、本人も明確には意識していない力を捉えることです。

「何が欲しいか」より「なぜ動けないか」を見る

商品開発や広告企画では、「顧客は何を求めているか」という問いが中心になります。

しかし、人が動かない理由を考えるときは、「何が欲しいか」だけでは不十分です。

すでに必要性を理解しているのに、購入しない。

興味を持っているのに、問い合わせない。

使えば便利になると分かっているのに、いまの方法を変えない。

そこには、行動を妨げる摩擦があります。

価格への不安かもしれません。選択を間違える恐れかもしれません。手続きの面倒さや、周囲への説明の難しさかもしれません。新しいことを始めることで、現在の自分を否定するように感じる場合もあります。

顧客を動かすには、商品の魅力を足し続けるだけでなく、動けない理由を理解し、その摩擦を小さくする必要があります。

強い訴求をつくる前に、顧客の足を止めているものは何かを考える。

そこから、クリエイティブが担うべき役割が見えてきます。

インサイトを見つける5つの観察視点

インサイトは、会議室で想像するだけでは見つかりません。顧客の発言、行動、環境を行き来しながら、繰り返し現れる矛盾を探します。

1.発言と行動のズレ

「価格を重視する」と言いながら、安心できる有名ブランドを選ぶ。「時短したい」と言いながら、自分で細かく確認できる方法を好む。

どちらかが間違っているのではありません。その二つが同時に存在している理由を考えます。

価格を抑えたい気持ちより、失敗を避けたい気持ちが強いのかもしれません。時間を節約したい一方で、判断を他者へ委ねることには不安があるのかもしれません。

ズレは矛盾ではなく、複数の感情がせめぎ合っている証拠です。

2.言葉が止まる瞬間

インタビューでは、流暢な回答だけに注目しがちです。

しかし、「うまく言えないのですが」「なんとなく」「別に困ってはいないけれど」と言葉が止まるところに、まだ整理されていない感情が隠れていることがあります。

すぐに次の質問へ進まず、具体的な場面を聞きます。

最後にそう感じたのはいつか。そのとき、どこにいて、何をしていたか。誰かと一緒だったか。その前後に何が起きたか。

抽象的な意見を、実際の出来事へ戻すことで、感情の背景が見えてきます。

3.続かなかった行動

購入したものだけでなく、途中でやめたことにも注目します。

登録したのに使わなくなったサービス。買ったのに開封していない商品。始めたのに続かなかった習慣。

顧客は、最初から関心がなかったわけではありません。一度は行動したのに、継続を妨げる何かがあったのです。

その離脱地点を知ると、広告で期待を高めるだけでは解決できない、商品や体験の課題が見つかります。

4.代わりに行っていること

顧客が自社の商品を使っていないからといって、何もしていないとは限りません。

専用サービスを使わず、表計算ソフトで管理している。運動施設へ行かず、自宅で短い動画を見ながら体を動かしている。高価な商品を買わず、手持ちのものを組み合わせて代用している。

こうした代替行動には、顧客が本当に守りたい条件が表れます。

性能より自由度を求めているのか。効果より気軽さを優先しているのか。人に知られずに解決したいのか。

競合商品だけでなく、顧客がいま採用している代替手段を見ることが重要です。

5.人に見せたい自分と、実際の自分

商品やサービスは、機能だけで選ばれるわけではありません。

それを選ぶことで、どのような自分でいたいのか。周囲から、どう見られたいのか。反対に、どのような自分だと思われたくないのか。

環境に配慮した商品を選ぶこと。仕事道具にこだわること。健康的な生活を始めること。そこには、問題解決と同時に自己像の選択があります。

人前で語る理想と、日常の現実との差に注目すると、行動を後押しする感情が見えてきます。

顧客の声を「深掘り」するだけでは足りない

同じ質問に対して「なぜですか」と繰り返せば、必ず本音へ届くわけではありません。

本人が意識していない理由は、質問されても答えられないからです。問い続けるうちに、相手がその場で納得しやすい説明をつくってしまうこともあります。

そこで必要になるのが、言葉以外の情報です。

実際に商品を選ぶ場面を見る。使っている環境を訪ねる。迷った選択肢を聞く。購入までの履歴をたどる。途中でやめた理由を確かめる。

発言だけでなく、行動、時間、場所、周囲の人、代替手段を組み合わせて理解します。

一人の印象的な言葉だけで結論を出さず、複数の人や場面に共通する構造があるかも確認しなければなりません。

インサイトは、想像力だけでつくるキャッチコピーではなく、観察した事実に基づく仮説です。

インサイトを、広告表現へ変換する

インサイトが見つかっても、それをそのまま広告に書けばよいわけではありません。

たとえば、「続けられない自分を責めたくない」という気持ちが見えたとします。

広告で「あなたは自分を責めています」と指摘すれば、顧客は否定されたように感じるかもしれません。

クリエイティブの役割は、分析結果を説明することではなく、顧客が自分の気持ちに自然と気づける場面をつくることです。

完璧に続ける姿ではなく、短い時間でも始められた瞬間を描く。努力を称賛するのではなく、休んでも戻れる安心を見せる。「意志が弱い」という問題を、「始めるまでの摩擦が大きい」という見方へ変える。

インサイトを、物語、言葉、映像、体験へ翻訳することで、顧客は「これは自分のことだ」と感じます。

強いクリエイティブは、顧客が知らなかった情報を伝えるだけではありません。

本人の中にあったけれど、まだ言葉になっていなかった感情を可視化します。

顧客の声は、答えではなく対話の始まり

顧客の声を、そのまま企画にしてはいけない。

これは、顧客の意見を軽視するという意味ではありません。

むしろ、一つの回答だけで理解したつもりにならず、その人の行動や生活まで丁寧に見るということです。

何を欲しいと言っているか。

実際には何を選んでいるか。

何を始め、どこでやめたか。

どのような不安や摩擦が、次の行動を止めているか。

言葉と行動の間にあるズレを観察すると、顧客自身も説明できなかった気持ちが見えてきます。

マーケティングは、その背景にある構造を発見する。

クリエイティブは、その構造を人が感じられる表現へ変える。

顧客インサイトとは、消費者を操るための秘密のスイッチではありません。人がなぜ迷い、なぜ動けないのかを理解し、より自然に選べる状態をつくるための視点です。

顧客の言葉を聞く。そして、言葉だけでは見えないものまで観察する。

そこから、人の現実に寄り添う企画が始まります。


顧客の「言葉の奥」まで見られていますか

アンケートやインタビューで集めた声を並べるだけでは、人が行動する本当の理由に届かないことがあります。

NEOTERRAINでは、企業からの発信だけでなく、利用者の声、実際の行動、商品が使われる現場を取材し、その間にある矛盾や感情を整理します。

顧客が何を言ったかだけではなく、なぜそう語り、実際にはどのように行動しているのか。そこから見つけたインサイトを、記事、映像、ストーリーなどの表現へ変換します。

商品の魅力を強く語る前に、顧客が動けない理由を見つめ直してみませんか。

つくる力を、届く力へ。

映像・記事・SNS、マーケティングや企画など、
現場で培った「伝わるコンテンツ」のヒントをお届けします。

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