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提灯は、これから何を灯すのか。

Japanese washi paper lanterns glowing softly in a contemporary interior, with the Japanese headline “New roles for inherited craftsmanship.”
提灯の手仕事と未来|受け継ぐ技に、新しい役割を。
Contents

日本の手仕事を、未来の暮らしにつなぐ価値のつくり方

夜の街で、一つの提灯が灯っている。

そこに書かれた店の名前。紙を透かした光。通りに浮かぶ、丸い輪郭。その姿を見るとき、私たちは明るさだけを受け取っているのだろうか。

店が開いていること。誰かを迎える場所があること。その街に、今日も暮らしが続いていること。

提灯は、光とともに、場所の意味を伝えている。

私には、五十嵐提灯という老舗と少し縁がある。そのつながりをきっかけに、身近にありながら深く考えてこなかった、この道具の未来が気になった。

伝統的な提灯を、これからの社会へどうつないでいくのか。

それを考えるには、受け継がれた技術と、現代の人が必要とする価値の間を、あらためて見つめる必要がある。

明かりの先にある、提灯の仕事

祭りに掲げられる提灯。店先の看板となる提灯。盆に用いられる提灯。同じ「提灯」でも、その役割は一つではない。

鈴木茂兵衛商店の公式サイトでも、祭り・奉納、お盆、看板といった用途が紹介されている。
出典:https://www.suzumo.com/products/zoto/index.html

ここから見えてくるのは、提灯が、光をつくると同時に、人の行為に結びついてきた道具だということだ。

集まる。迎える。祈る。知らせる。

照明器具としての性能だけを比べれば見落としてしまう価値が、その周りにある。

提灯の未来を考える入口は、この働きを一つずつ読み直すことにある。

竹と紙がつくる、使い方の可能性

提灯の技術には、造形の美しさに加えて、使うための工夫が含まれている。

鈴木茂兵衛商店は、広げて使い、たたんで収納する機能を大切にしながら、新しい使用場面に合わせた製品や技術の開発を進めている。また、手仕事に加え、道具や機械、製造環境の工夫も、ものづくりの一部として説明している。
出典:https://www.suzumo.com/feature/index.html

技術を受け継ぐとは、完成した形を繰り返すことに加え、素材や構造を理解し、使い手に合わせて応用する力を受け継ぐことでもある。

光を透かすこと。立体になり、たためること。表面に文字や絵を載せられること。

こうした特徴を、今の生活のどこで生かせるだろうか。その問いから、新しい用途が生まれる。

AKARIは、提灯の技術を「暮らしの彫刻」へつないだ

提灯の未来を考えるうえで、一つの重要な事例が、イサム・ノグチのAKARIだ。

1951年、岐阜提灯との出会いをきっかけに生まれたAKARIは、伝統的な提灯製造の技術を用いながら、多様な造形へと展開した。竹ひごの線や和紙の陰影を生かし、照明であるとともに彫刻として捉えられる作品となった。
出典:https://akari-ozeki.com/about/

この事例から読み取れるのは、技術の持つ可能性を、別の視点から見つけることの大きさだ。

提灯を買う予定のなかった人も、自分の部屋に置く照明や、空間に表情を与える作品としてなら、関心を持つかもしれない。

受け継がれた技術と、新しい使い手。その間に、造形と用途を提案する仕事がある。

ただし、すべての提灯がAKARIを目指す必要はない。祭りや祈りのための仕事にも固有の価値がある。大切なのは、それぞれの技術と関係に合った接続先を見つけることだ。

「たためる」が、気持ちを送る仕組みになる

岐阜のオゼキが展開する「レター提灯」は、小さな提灯にメッセージやイラストを描き、平らにたたんで封筒で送れる商品だ。受け取った後は、インテリアとして使える。
出典:https://www.ozeki-lantern.co.jp/product-letter-lantern.html

この商品は、提灯の構造を、人と人のコミュニケーションへつないでいる。

たためるという特徴が、郵送できるという使いやすさになる。紙の表面が、気持ちを書く場所になる。届いた提灯を飾ることで、贈られた言葉が暮らしの中に残る。

ここにあるのは、使う場面まで含めたデザインだ。

鈴木茂兵衛商店の名入提灯「贈燈」も、人生の節目や祝い事に向けた提案である。西ノ内和紙を用い、寄席文字の書家が名前や屋号、言葉を入れる。
出典:https://www.suzumo.com/products/zoto/index.html

提灯は、贈る理由を持つことで、これまで接点のなかった人の暮らしに入っていく。

店の名前を、街の風景にする

もう一つ、考えたいのが商いとの関係だ。

店の名前を知らせる方法は、数多くある。その中で提灯を選ぶ意味は、文字が読めることに加えて、どのような店として感じてもらうかにあるのではないか。

形、大きさ、色、文字。昼間の姿と、夜に灯ったときの姿。

それらを店の空間や料理、接客と合わせて考えれば、提灯はブランドを形づくる要素になる。

ここからは、NEOTERRAINとしての提案だ。

職人の技術を必要とする店舗と出会うために、「この提灯をつくれます」という紹介に加え、「この店らしさを、通りからどう伝えるか」という相談の入口をつくる。

職人、店主、デザイナーが、それぞれの知識を持ち寄る。提灯が担える役割を、商いの全体から考える。

新しい価値は、ものの形だけでなく、提案の仕方からも生まれる。

未来への接続には、続けられる商いが必要だ

新しい商品ができることと、職人の仕事が続くこと。その間には、いくつもの条件がある。

誰が購入するのか。どこで知り、どう注文するのか。制作に必要な時間と費用を、価格に反映できるのか。使い始めた後の相談に、どこまで対応できるのか。

話題になっても、注文のたびに無理が生じる仕組みでは、継続は難しい。

また、紙や骨組み、文字など、どの工程を誰が担っているかによって、新しくできることも異なる。産地や事業者ごとの実態を見ずに、同じ成長策を当てはめることはできない。

だからこそ、発信や販売、空間設計を担う人にも役割がある。

技術を理解し、必要とする人に伝わる言葉へ置き換える。納期や仕様を整理し、注文しやすくする。使われた後の反応を、つくり手へ返す。

職人の技術を未来へ運ぶには、その周囲にも仕事が必要なのだ。

EDITOR’S NOTE — NEOTERRAIN

提灯について調べながら、私が考えたのは、技術と使い手の距離だった。

つくる力があっても、その価値を必要とする人と出会えるとは限らない。使い手の側も、自分の暮らしや商いに、その技術がどう関わるのかを知らないことがある。

その距離を縮めることに、編集の役割がある。

一つの提灯が、どんな時間を生み、どんな場所をつくり、誰に喜ばれるのか。具体的な風景として伝えることで、次の使い道が見えてくる。

五十嵐提灯とのささやかな縁から始まった問いは、日本のさまざまな手仕事へと広がっていく。

提灯は、これから何を灯すのか。

その答えは、職人の手と、これから出会う使い手の間にある。

文・構成:三宅雅之/NEOTERRAIN Journal

※本記事は公開資料をもとに構成した考察記事です。五十嵐提灯への訪問・取材に基づくものではありません。将来の用途や事業の展開に関する提案は、筆者の考察です。

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