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大磯の古民家から、発酵食品を“テーブルのファッション”へ

Shonan Soy Studioの古民家外観に「発酵は、食卓のファッションになる。」というコピーを重ねたアイキャッチ画像
Shonan Soy Studioの古民家外観
Contents

Shonan Soy Studio 小野岡圭太さんが描く、大豆発酵の新しい風景

大磯駅を出て、旧東海道の松並木を抜ける。

海の気配が、どこか遠くからゆっくりと流れてくる。観光地のように派手ではなく、住宅街の奥に静かに時間が積もっているような町。かつて大隈重信、伊藤博文、吉田茂といった政治家や首相経験者たちが滞在した大磯は、相模湾の潮風と松林の緑に包まれた土地でもある。

それは単なる景色の良さだけではない。

この町には、考えるための余白がある。
都市から離れすぎず、けれど都市の速度からは少し距離を置ける。
身体を休め、思考を整え、人と語り合うための場所。

そんな大磯の一角に、Shonan Soy Studioがある。

古民家を改装したその場所は、オフィスであり、工房であり、カフェであり、販売の場でもある。伝統的な建物の気配を残しながら、現代的なクリエイティブの空気が丁寧に重ねられている。店先に立つと、ここが単なる食品ブランドの拠点ではないことがすぐに分かる。

迎えてくれたのは、Shonan Soy Studio代表の小野岡圭太さん。

柔らかな笑顔で案内してくれた2階のオフィスで、話を伺った。

テーマは、大豆発酵食品。
けれど、この日聞いた話は、納豆や味噌といった食品の話だけではなかった。

そこにあったのは、日本の伝統食をどう現代の食卓に翻訳するのか。
海外の人々に、どう日本の発酵文化を届けるのか。
そして、食べることを通じて、社会にどんな循環を生み出せるのか。

大磯の古民家から生まれているのは、発酵食品の新商品ではなく、発酵食品の新しい“見え方”だった。


オーナー・小野岡圭太さん
Shonan Soy Studio代表・小野岡圭太さん

湘南で、大豆のスタジオをつくる

「湘南そいスタジオという名前は、そのままなんです。Soyは大豆。湘南でやっている大豆のスタジオ、という意味です」

小野岡さんはそう話す。

Shonan Soy Studioは、大豆発酵食品を中心に「食のアップデート」を行うブランドだ。納豆、味噌、醤油といった日本の伝統食にフォーカスし、それらを現代のテーブルに届けるための商品開発を行っている。

ここで重要なのは、単に「伝統食を守る」だけではないことだ。

納豆を納豆のまま、味噌を味噌汁のまま海外へ持っていくだけでは、なかなか生活には根づかない。文化をそのまま渡すのではなく、食べる人の暮らしや習慣に合わせて翻訳する必要がある。

小野岡さんの言葉を借りれば、それは「輸出」ではなく「アップデート」だ。

たとえば味噌。

日本では味噌汁として日常的に使われるが、海外では「Miso」という言葉は知られていても、多くの場合、それは味噌汁のイメージにとどまっている。食卓に常備して、日々の料理に自然に使うという感覚はまだ広がっていない。

そこでShonan Soy Studioが開発したのが「みそぶし」だ。

味噌を、パルメザンチーズのように削って使う。
サラダ、パスタ、卵料理、スープ、肉料理。
味噌汁をつくらなくても、味噌の旨みを料理に重ねることができる。

日本人にとって当たり前だった味噌が、海外の食卓で別の表情を持つ。そこには、伝統を壊すのではなく、伝統の入り口を増やす発想がある。

Shonan Soy Studioの商品には、「みそぶし」のほかにも、納豆ジャーキー、発酵サラダふりかけなどがある。どれも、伝統的な大豆発酵食品をそのまま売るのではなく、味、形、食べ方、体験までを一つのコンセプトとして設計している。

商品を並べるというより、食卓の風景をデザインしている。
その感覚が、このブランドの大きな魅力だ。


みそぶし、ナットウジャーキー、発酵サラダふりかけ、そして味噌づくりの現場

原点にあった、海外生活と2つのライフゴール

小野岡さんの原点には、長い海外生活がある。

平塚で幼少期を過ごし、中学時代を栃木で、高校時代を藤沢で過ごした。その後、大学からアメリカへ渡り、ロサンゼルス、ニューヨーク、そしてイタリアのヴェローナでも暮らした。帰国後は外資系の化学メーカーで約8年間働き、その後、起業した。

学生時代から、30歳までに起業することは決めていたという。

「地元に残りたい人が、残れる場所をつくりたい」

そんな思いがあった。

神奈川に暮らす人は、地元への愛着が強い。しかし、地元に就職先がないために離れざるを得ない人もいる。ならば、自分で一つ会社をつくることで、地元に残りたい人が残れる場所になるのではないか。小野岡さんは、そんなことをぼんやりと考えていた。

ただし、起業はあくまで手段にすぎない。

「自分は人生で何を成し遂げたいのか」

そう考え抜いた結果、小野岡さんは2つのライフゴールにたどり着く。

一つ目は、日本の伝統や文化を海外に広めること。

海外に長く暮らしたことで、外から見える日本の魅力に気づいた。日本にいると当たり前に感じてしまう食文化や発酵文化も、外から見ると非常に豊かで、独自性のあるものだった。

二つ目は、機会格差の是正。

生まれた場所や育った環境によって、挑戦できる人と、そうでない人がいる。その格差を少しでも減らしたい。小学生の頃からユニセフに関心があったという小野岡さんにとって、この思いは幼い頃からの根っこにあるものだった。

日本の伝統文化を海外に広めること。
機会格差を是正すること。

この2つのライフゴールを実現するための手段として生まれたのが、Shonan Soy Studioだった。

大豆発酵食品のブランドでありながら、その奥には、文化と社会をつなぐ大きな問いがある。


Shonan Soy Studio代表・小野岡圭太さん

納豆を、パンにのせる発想

Shonan Soy Studioの最初の商品開発は、驚くほど自由だった。

小野岡さんが最初に開発したのは、コーヒー味の納豆「Soyfee」だったという。

納豆のアンモニア臭やネバネバが苦手な人に向けて、パンにのせ、メープルシロップを少し垂らして食べられる納豆。大豆にコーヒー液を染み込ませてから納豆菌で発酵させるという、聞くだけでも想像力を刺激される商品だ。

この発想は、海外の友人たちの反応から生まれている。

アメリカ時代のルームメイトは、納豆の栄養価には興味を持っていた。しかし実際に食べると、「3日穿き続けた靴下の香りがする」と言って、継続することはできなかったという。

日本人にとってはおなじみの香りや粘りも、海外の人にとっては大きなハードルになる。特に「ネバネバ」は、匂い以上に苦手意識を持たれやすい。オクラやモロヘイヤのような粘りのある食材を日常的に食べない文化圏では、手につく感覚や口の中のテクスチャーに抵抗がある。

ならば、納豆の良さを残しながら、食べやすい形に変えられないか。

その問いから、納豆ジャーキーが生まれた。

一般的なジャーキーは高温で一気に乾燥させる。しかし、発酵食品にとって重要な酵素を活かすために、Shonan Soy Studioでは40度前後の低温で、温度と湿度を細かくコントロールしながら乾燥させている。

難しいのは、「手にはつかないけれど、豆の中にはネバネバが残っている」状態をつくること。

粘りを完全になくしてしまえば、納豆らしさは失われる。
けれど、手や口に強く残りすぎれば、海外の人には受け入れられにくい。

その境界線を探ることが、商品づくりの肝になる。

ここには、小野岡さんの前職での経験も活きている。外資系化学メーカー時代、接着や粘性のコントロールに関わっていた経験が、発酵食品のテクスチャー設計につながっている。

伝統食でありながら、そこには科学的な視点がある。
感覚的でありながら、マーケットインの設計がある。

それが、Shonan Soy Studioの商品に独特の説得力を与えている。


SOYFFEE|コーヒー風味納豆の粘り
コーヒー風味納豆「SOYFFEE」

味噌は、なぜ削れなかったのか

「みそぶし」の話も印象的だった。

味噌を削って使う。
言葉にすると簡単だが、技術的には非常に難しい。

味噌は塩分濃度が高く、普通に乾燥庫へ入れても外側だけが乾き、内側はウェットな状態が続いてしまう。浸透圧の作用によって、均一に乾燥させることが難しいのだという。

Shonan Soy Studioは、その味噌を均一に乾燥させ、削れる固形状にする技術を作り上げた。試作は300個以上に及んだ。

この「削れる味噌」は、単なる珍しい商品ではない。

味噌を味噌汁から解放する商品でもある。

日本人にとって味噌は、台所の奥にある調味料であり、味噌汁のためのものという印象が強い。しかし、削って使えることで、味噌はチーズのように、最後の仕上げとして料理に重ねることができる。

発酵の旨みを、もっと自由に使う。
伝統食を、もっと軽やかに食卓へ置く。
そのための形が、「みそぶし」なのだ。

現在、この技術は小田原の伝統的な味噌蔵へ継承され、委託製造されているという。

ここにも重要な意味がある。

伝統的な味噌メーカーは、ただ味噌を売るだけでは価格競争に巻き込まれやすい。大量生産品と同じ棚に並べられ、価格で比較されると、丁寧なものづくりの価値が見えにくくなる。

しかし、味噌の使い方そのものを変えることができれば、新しい価値が生まれる。

Shonan Soy Studioは、伝統を残すために、伝統の形を少し変えている。
それは、守るための変化だ。


パスタの上にみそぶしを削りかける

商品ではなく、体験を設計する

小野岡さんの話を聞いていると、商品開発において「何をつくるか」と同じくらい、「どう見えるか」「どう届くか」を大切にしていることが分かる。

前職ではマーケティング部門にいた。消費者のインサイトを徹底的に捉え、マーケットインの視点で、どう製品を作るかを設計していたという。

日本のものづくりでは、ときに「これができたから、どこに売ろう」というプロダクトアウトの発想になりやすい。しかしShonan Soy Studioでは、誰が、どんな場面で、何に困っていて、何を心地よいと感じるのかというところから出発する。

小野岡さんは、下のショールームでお客さんの声を直接聞くことを大切にしている。

コーヒー納豆を出したとき、「これ誰が食べるの?」と率直に言われたこともあったという。そうした本音の一言こそ、商品づくりに活きる。

インサイトは、アンケートの数字だけにあるのではない。
ふとした表情、戸惑い、笑い、違和感。
そうした現場の感覚を拾い上げることで、商品は少しずつ磨かれていく。

だからこそ、小野岡さんは会社の規模感にもこだわる。

Shonan Soy Studioは、会社を急拡大させることを目的にしているわけではない。大切にしているのは、自分たちの手が届く範囲で、製品や現場の感覚を見失わずに事業を続けること。小野岡さん自身がリーダーでありながら、お客さんの声や商品づくりの細部に触れ続けられる規模感を大切にしている。

大きくすることが目的ではない。
手触りを失わないことが大事なのだ。

製造2名、マーケティング3名。
5名のチームで、一つ一つの商品を丁寧に作っている。

小野岡さんは、そのものづくりを「クチュール」のようだと表現した。大量生産の既製服ではなく、一点一点仕立てる服のように。納豆や味噌という日常の食品に、そんな表現が重なるところが面白い。

発酵食品を、仕立てる。
その言葉が、Shonan Soy Studioのものづくりをよく表している。


Shonan Soy Studioに掛かる白い暖簾と木造の外観

大磯という、手触りのある町

Shonan Soy Studioが大磯に拠点を構えたのは、最初から大磯ありきだったわけではない。

藤沢、茅ヶ崎、平塚と探すなかで、古民家がなかなか見つからなかった。伝統をアップデートする会社だからこそ、ブランドショップ全体からその世界観を感じてもらえる場所を探していた。

古い建物を現代風にリノベーションし、伝統と現代が重なる空間にしたかった。

そして、大磯でこの奥まった、秘密基地のような古民家に出会った。

小野岡さんは、大磯という環境がブランドづくりに良い影響を与えていると話す。

大磯は海のリゾートでありながら、町の規模が大きすぎない。人口約3万人というサイズ感が絶妙だという。平塚や藤沢のように大きな都市では、街全体を俯瞰しながら自分の事業を重ね合わせることは難しい。しかし大磯は、自分の感覚で捉えられる。

小野岡さんはそれを「手触り感」と表現した。

この言葉が、とても印象に残った。

手触り感のある町。
顔が見える距離。
自分の仕事が、地域の空気とどう関わっているのかを感じられるサイズ。

小野岡さんは現在、大磯町の観光協会のマーケティング支援も行っている。大磯町のブランドピラミッドづくりや、Instagramの素材提供などにも関わっているという。

その中で、小野岡さんは「大磯という街自体が、一つの伝統食のようだ」と感じている。

これは非常に面白い視点だ。

伝統食は、時間をかけて育ってきたものだ。
土地の気候、暮らし、人の手、保存の知恵、食べ方の習慣。
それらが積み重なって、ひとつの味になる。

大磯という町も、同じなのかもしれない。

海と山。
旧東海道の松並木。
明治以降の別荘文化。
政治家たちが滞在した記憶。
静かな住宅街。
小さな店。
新しい挑戦をする人たち。

さまざまな時間と人の営みが発酵するように重なり、町の風味になっている。

小野岡さんにとって、大磯は単なる拠点ではない。
自分たちの思想を映し出す、相性の良い土地なのだと思う。


大磯港の防波堤と青い相模湾、遠くに見える海の景色

発酵食品を、テーブルのファッションへ

この取材の中で、最も印象に残った言葉がある。

「発酵食品がテーブルのファッションとなるライフスタイルの醸成」

英語では、Fermented foods as table fashion。

このコンセプトを聞いたとき、Shonan Soy Studioが目指している場所が一気に見えた気がした。

発酵食品を広めるとき、一般的には「健康に良い」「栄養価が高い」「腸活に良い」といった機能性から入ることが多い。もちろん、それは大切な価値だ。

しかし、小野岡さんは機能性を前面に押し出すのではなく、その食品を食べているライフスタイルそのものが、おしゃれで、憧れられるものになることを目指している。

洋服を着るように、発酵食品を食卓に置く。
スニーカーを選ぶように、味噌や納豆の新しい形を選ぶ。
健康のために我慢して食べるのではなく、かっこいいから、心地いいから、暮らしに置きたくなる。

これは非常に現代的な発想だ。

人は、正しさだけでは動かない。
機能だけでも動かない。
そこに美しさや気分、憧れが加わって初めて、日常の中に入ってくる。

発酵食品を「体に良いもの」としてではなく、「テーブルを豊かにするもの」として捉え直す。
そこにShonan Soy Studioの独自性がある。

この考え方は、NEOTERRAINやHITOTEMAにも通じるものがある。

社会に良いもの、地域に根ざしたもの、丁寧につくられたもの。
それらは、ただ正しいだけでは届かない。
誰かの気持ちが動くように、見え方を整え、言葉を与え、物語として届ける必要がある。

Shonan Soy Studioは、発酵食品にそれを行っている。

Shonan Soy Studioの商品を使った朝食とコーヒーを楽しむ食卓シーン

一口を、みんなの一口に

Shonan Soy Studioのもう一つの重要な取り組みが、「Bite for Bite」だ。

これは、売上の一部を使い、湘南地域の子ども食堂へ大豆を寄付する活動である。年間約150kgの大豆を寄付しているという。

コンセプトは、「一口を、みんなの一口に」。

この活動は、小野岡さんの2つ目のライフゴールである「機会格差の是正」とつながっている。

なぜ、大豆なのか。

大豆は保存が利く。栄養価も高く、受け取る側にとっても扱いやすい。食品ロスになりにくく、必要なときに使える。単に「寄付をしている」ということではなく、受け取る側の事情まで考えられているところに、この活動の誠実さがある。

この着想の背景には、ラオスでの体験がある。

小野岡さんは10年ほど前にラオスを訪れた。ラオスは経済指標で見れば、アジアの中でも決して豊かな国とは言えない。しかし実際に行ってみると、ストリートチルドレンや物乞いの姿がほとんど見られず、人々はとても穏やかに、幸せそうに暮らしていたという。

なぜなのか。

その理由の一つとして、小野岡さんが出会ったのが、ラオスの托鉢文化だった。

朝早く、お坊さんたちが街を歩き、住民からご飯を受け取る。そのご飯は一度お寺に持ち帰られ、さらに貧しい人たちへ再分配される。食べ物が、地域の中で自然に循環している。

小野岡さんは、その仕組みに大きな感銘を受けた。

経済的に決して豊かではないラオスで、このような循環が日常的に成り立っている。ならば、物質的に豊かな日本で、なぜ同じようなことができないのか。

その問いから、Bite for Biteは生まれた。

食べることは、本来とても個人的な行為だ。
けれど、その一口が誰かの一口につながるなら、食べることは社会的な行為にもなる。

Shonan Soy Studioの商品を買う。
その売上の一部が大豆となり、地域の子ども食堂へ届く。
その大豆が、誰かの食卓になる。

一口が、循環する。

この活動は、企業の社会貢献という言葉だけでは少し足りない。
それは、小野岡さん自身の人生観や、ラオスで見た風景から続いている実践なのだ。


ラオス・ルアンプラバンのメコン川に沈む夕陽
ラオスで托鉢を行う僧侶と、食を受け取る子ども

マーケティングとは、勝手に買われる状態をつくること

取材の最後に、小野岡さんにマーケティングの本質について尋ねた。

答えは、とても明快だった。

「売る作業をせずに、勝手に買われる状態をつくること」

ただ広告を出すことでも、SNSを更新することでもない。
500円というお金と交換に、消費者が本質的に何を喜んでいるのか。
何を解決したいのか。
どんな気持ちになりたいのか。

それを考え尽くし、価値を整理すること。

その価値が定まって初めて、SNSやプロモーションといった手段が活きる。

これは、Shonan Soy Studioの商品を見ればよく分かる。

納豆ジャーキーは、納豆をそのまま広めようとしていない。
味噌節は、味噌汁を海外に押しつけていない。
Bite for Biteは、ただ寄付を掲げるだけではなく、日常の一口と社会の循環をつないでいる。

すべてにおいて、相手の生活や気持ちを見ている。

そして、だからこそ無理に売り込まなくても、興味を持つ人が現れる。
熱狂的に好きになる人が生まれる。
その小さな熱が、少しずつ広がっていく。

大量に売ることだけを目的にするのではなく、深く届くことを大切にする。
その姿勢が、小野岡さんの言葉から伝わってきた。

Shonan Soy Studioが手がける、みそぶし、ナットウジャーキー、発酵サラダふりかけ

大磯で、発酵する未来

大磯という土地は、不思議な場所だ。

かつて政治家や実業家たちが、身体を休め、思考を深め、人と語り合った町。海と山に囲まれた静けさの中で、日本の近代を動かす人々が集まった場所。

その大磯で今、小野岡さんは大豆発酵食品の未来を考えている。

納豆を、海外の人にも食べやすく。
味噌を、味噌汁以外の食卓へ。
発酵食品を、健康訴求だけでなく、ファッションのようなライフスタイルへ。
そして、食べることを、誰かを支える循環へ。

大磯に流れる静かな時間と、Shonan Soy Studioの思想は、どこか深いところで響き合っているように感じた。

小野岡さんは、大磯という町を「手触り感のあるサイズ」と表現した。
その言葉は、商品づくりにも、会社づくりにも、社会との関わり方にも通じている。

大きくしすぎない。
見えないところへ流しすぎない。
自分たちの手が届く範囲で、丁寧につくり、直接声を聞き、少しずつ価値を届けていく。

それは、発酵そのものにも似ている。

急激に変化させるのではなく、時間をかけて、微生物の働きと人の手を信じる。
目に見えない変化を積み重ね、やがて香りや旨みとして立ち上がる。

Shonan Soy Studioがつくっているのは、納豆や味噌の新商品だけではない。

日本の発酵文化を、現代の暮らしにもう一度置き直すこと。
食べることを、少しだけ美しく、少しだけ社会的な行為に変えること。
そして、大磯という土地から、世界のテーブルへ向けて、新しい発酵の風景を届けること。

旧東海道の松並木を抜けた先にある古民家で、そんな未来が静かに仕込まれていた。

発酵食品は、これからテーブルのファッションになる。

その言葉は、単なるブランドコピーではなく、小野岡さんが見ている未来そのものなのだと思う。

Shonan Soy Studioについて、詳しくは公式サイトをご覧ください。
大磯の古民家を拠点に、大豆発酵食品を現代の食卓へ届ける取り組みや、商品ラインナップ、ブランドの思想を知ることができます。

Shonan Soy Studio
https://www.shonansoystudioinc.com/

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NEOTERRAIN Journal 編集長 三宅雅之


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