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PFASを水から取り除いたあと、どこへ行くのか―浄水処理の先に残る「濃縮された汚染」

浄水施設の地下にPFASを含む汚染物質が集積する様子を描き、水から除去した後も残る汚染を表現したイメージ
浄水施設の地下にPFASを含む汚染物質が集積する様子を描き、水から除去した後も残る汚染を表現したイメージ

蛇口から出る水のPFAS濃度を下げる。

そのために、活性炭などを使った浄水処理が行われている。

水質検査の結果が基準値を下回れば、ひとまず飲み水の安全は確保される。

しかし、ここで一つの疑問が残る。

水から取り除かれたPFASは、どこへ行ったのだろうか。

PFASは、活性炭に吸着される。
膜で分離され、濃縮水に移る。
泡とともに回収される。

浄水処理によって、PFASが目の前の水から見えなくなったとしても、物質そのものが消滅したとは限らない。

水から、活性炭へ。
地下水から、濃縮液へ。
広く薄い汚染から、狭く濃い汚染へ。

PFAS対策の難しさは、「取り除くこと」と「壊すこと」が同じではない点にある。

第3弾では、活性炭処理をはじめとする除去技術と、その先に生まれる使用済み活性炭や濃縮廃液、焼却処理、費用負担の問題を追う。

Contents

浄水処理は、PFASを消しているのではない

一般的な浄水場では、原水に薬品を加えて微細な汚れを集める「凝集」、沈めて取り除く「沈殿」、砂などを通す「ろ過」といった工程が使われている。

これらは、濁りや粒子状の物質を取り除くために有効な方法である。

しかし、水中に溶けているPFOSやPFOAは、通常の凝集・沈殿・砂ろ過だけでは十分に除去することが難しい。

そこで検討されるのが、次のような処理技術である。

  • 粒状活性炭
  • 粉末活性炭
  • イオン交換樹脂
  • 逆浸透膜
  • ナノろ過膜
  • 泡沫分離
  • 複数技術を組み合わせた処理

これらの技術は、PFASを水から吸着・分離し、処理後の水に含まれる濃度を低下させる。

だが、多くの場合、PFASの強固な炭素とフッ素の結合を、その場で完全に分解しているわけではない。

PFASの居場所を、水から別の場所へ移しているのである。

活性炭は、なぜPFASを除去できるのか

PFAS対策で広く知られているのが、活性炭による吸着処理である。

活性炭の表面には、目に見えないほど小さな孔が無数に存在する。非常に大きな表面積を持ち、水中の有機物などを吸着する性質がある。

PFOSやPFOAも、この表面に取り込まれる。

浄水場では、活性炭を充填した吸着塔に水を通す粒状活性炭処理や、粉末状の活性炭を水に加えて回収する方法などが用いられる。

適切に管理されれば、活性炭処理は水中のPFAS濃度を低下させる有効な手段になる。

一方、その性能は一定ではない。

活性炭の種類、水温、水質、PFASの濃度、ほかの有機物の量、水と活性炭が接触する時間などによって、除去性能は変化する。

PFASの種類によっても吸着されやすさは異なる。一般に、炭素鎖の長いPFASは活性炭に吸着されやすく、短鎖PFASは通過しやすい傾向がある。

PFOSとPFOAの合算値だけを管理していても、別の短鎖PFASが処理水側へ抜けている可能性については、今後さらに知見を積み重ねる必要がある。

活性炭には「交換時期」がある

活性炭がPFASを吸着できる量には限界がある。

使い続ければ、活性炭の表面はPFASやほかの有機物で埋まり、やがて吸着能力が低下する。

限界に近づくと、処理水側へPFASが流れ出す「破過」が起こる可能性がある。

そのため、活性炭を導入すれば終わりではない。

処理前と処理後の水を継続的に測定し、濃度の変化を確認しながら、適切な時期に活性炭を交換しなければならない。

原水のPFAS濃度が高ければ、交換頻度も高くなる。PFAS以外の有機物が多い水では、それらも活性炭に吸着するため、PFASを吸着できる余力が早く失われる場合がある。

設備の設置費だけでなく、次のような運用費が継続的に発生する。

  • 水質検査
  • 活性炭の購入
  • 吸着塔の維持管理
  • 活性炭の交換作業
  • 使用済み活性炭の運搬
  • 再生または廃棄処理
  • 処理後の確認

PFAS対策は、一度設備を造れば終わる公共工事ではない。

汚染された原水を使い続ける限り、費用と管理が続いていく。

使用済み活性炭は「汚染を集めた物質」になる

PFASを吸着した活性炭には、水から取り除かれたPFASが蓄積している。

つまり、使用前の活性炭とは性質が異なる。

広い範囲の水に薄く含まれていたPFASを、一つの容器や吸着塔の中に集めた状態である。

環境省のPFASハンドブックは、使用済み活性炭を適切に管理しなければ、吸着したPFOSなどが溶出し、環境汚染を生じさせるおそれがあると説明している。

長期間保管する場合には、屋内で保管する、雨水が当たらないようにする、保管状態を定期的に確認するといった対策が重要になる。

雨ざらしにしたり、管理の不十分な場所へ置いたりすれば、集めたPFASが雨水によって再び環境へ流れ出す可能性がある。

水をきれいにするための資材が、新たな汚染源になってはならない。

環境省|PFASハンドブック

再生すれば、活性炭をもう一度使えるのか

使用済みの粒状活性炭は、高温で加熱する「熱賦活」などによって再生し、再び使用できる場合がある。

再生によって、活性炭の孔に吸着していた物質を取り除き、吸着能力を回復させる。

新しい活性炭を毎回使用するより、資源消費や廃棄量を減らせる可能性がある。環境省の技術実証でも、再生活性炭を循環利用することによる二酸化炭素排出量の削減効果が試算されている。

ただし、「活性炭が再生された」ことと、「PFASが完全に分解された」ことは分けて確認する必要がある。

加熱時の温度、滞留時間、炉の構造、排ガス処理などが適切でなければ、PFASや分解途中の物質が排ガスなどへ移る可能性を考えなければならない。

再生後の活性炭にPFASがどの程度残っているのか。
加熱によって、どこまで分解されたのか。
排ガスや灰に何が含まれているのか。

入口の使用済み活性炭だけでなく、出口となる再生活性炭、排ガス、灰、排水まで確認して、初めて処理全体を評価できる。

環境省|PFOS等の濃度低減のための対策技術集

イオン交換樹脂も、PFASの行き先をつくる

イオン交換樹脂は、水中の特定のイオンを樹脂に吸着させる技術である。

活性炭と比較して、条件によっては高い吸着容量を持ち、設備を小型化できる可能性がある。

一方、樹脂が吸着能力を失えば、交換または再生が必要になる。

使い捨ての樹脂であれば、PFASを含む廃棄物として適切に処理しなければならない。再生する場合には、樹脂からPFASを洗い出した再生廃液が発生する。

ここでも、PFASは消えたのではない。

水から樹脂へ移り、さらに濃縮された廃液へ移る。

処理技術を評価するときには、水道水の濃度だけでなく、樹脂や廃液を最終的にどう管理するのかまで見る必要がある。

逆浸透膜は、高濃度の濃縮水を生む

逆浸透膜は、非常に細かな膜に圧力をかけ、水と溶解物質を分ける技術である。

PFASだけでなく、さまざまな物質を高い割合で除去できる可能性がある。

しかし、膜を通過したきれいな水の反対側には、PFASを含む濃縮水が残る。

例えば、原水の大部分を処理水として回収できても、残った少量の水にPFASが集まる。体積は小さくなるが、濃度は高くなる。

この濃縮水を未処理のまま河川や下水へ流せば、PFASを別の水系へ移しただけになりかねない。

さらに、逆浸透膜には次のような課題もある。

  • 高い圧力をかけるためのエネルギー
  • 膜の目詰まり
  • 定期的な洗浄
  • 膜の交換
  • 洗浄排水の処理
  • PFAS濃縮水の管理

高い除去率だけでは、技術の持続可能性を判断できない。

何が除去され、どこに集まり、その後どう処理されるのか。

水処理の全体像を追う必要がある。

泡に集める「泡沫分離」

PFASの中には、界面活性剤としての性質を持ち、水と空気の境界に集まりやすいものがある。

この性質を利用した技術が泡沫分離である。

水の中に気泡を発生させ、PFASを泡の表面に集め、その泡を回収する。

大量の水に薄く広がったPFASを、少量の泡や液体に濃縮できれば、その後の処理量を減らせる可能性がある。

ただし、泡沫分離もPFASを分解する技術ではない。

回収された泡や濃縮液にはPFASが含まれており、その先の処理が必要になる。

単独で問題を解決するというより、活性炭、膜処理、熱処理などの前段に置き、最終処理する量を減らす技術として期待されている。

分離と分解を組み合わせる

PFASを含む水を、そのまま高温処理しようとすれば、大量の水を加熱しなければならず、多くのエネルギーが必要になる。

そのため、現実的な処理では次の二段階が重要になる。

  1. 大量の水からPFASを分離し、少量に濃縮する
  2. 濃縮されたPFASを分解または適切に処分する

活性炭、イオン交換樹脂、膜、泡沫分離は、主に一段目を担う。

焼却や熱分解、プラズマなどは、二段目の分解技術として検討されている。

つまり、PFAS対策では一つの万能技術を探すのではなく、汚染濃度、水量、水質、廃棄物の形状に応じて、複数の工程を組み合わせる必要がある。

焼却すれば、PFASは完全に壊れるのか

PFOSやPFOAを含む廃棄物について、日本では技術的留意事項に基づく焼却処理などが示されている。

適切な温度と滞留時間を確保し、排ガスを管理できる施設で処理することが重要になる。

PFASは、炭素とフッ素の結合が非常に強い。

温度が不十分だったり、炉の中にいる時間が短かったりすれば、完全に分解されず、別のPFASや含フッ素物質が生成される可能性について考慮しなければならない。

重要なのは、焼却炉の設定温度だけではない。

  • 廃棄物が実際に受けた温度
  • 炉内での滞留時間
  • 酸素などの燃焼条件
  • 投入するPFASの濃度と量
  • 排ガス処理設備
  • 灰やばいじんの管理
  • 排ガス、排水、残さの測定

これらを含めた処理システム全体で評価する必要がある。

環境省が2026年に公表した技術実証資料でも、PFASを含む土壌や廃棄物の熱処理について、処理後の土壌だけでなく、排ガスやばいじんなどを確認する試験が進められている。

「燃やしたから消えた」と判断するのではなく、PFASに含まれていたフッ素が、最終的にどのような形で回収・排出されたのかを確かめる視点が必要である。

環境省|令和6年度 PFOS等の濃度低減のための対策技術実証

プラズマなどの分解技術は実用化できるのか

PFASを分解する新たな技術として、プラズマ、電気化学的酸化、超臨界水酸化、光化学処理などの研究開発が進められている。

プラズマ処理では、高いエネルギーを持つ状態を利用し、PFASの強固な結合を切断することを目指す。

一部の実証では、泡沫分離や凍結濃縮などによってPFASを集めた後、プラズマで分解する組み合わせが検討されている。

しかし、実験室や小規模実証で高い分解率が確認されても、直ちに全国の浄水場で使えるわけではない。

  • 大量の水を処理できるか
  • エネルギー消費は現実的か
  • 装置を安定運転できるか
  • 短鎖PFASや分解生成物が残らないか
  • 総フッ素として収支を確認できるか
  • 導入費と運転費を負担できるか
  • 故障時や災害時にも安全に管理できるか

研究段階の「分解できた」と、社会インフラとしての「安全に運用できる」の間には、大きな距離がある。

環境省の実証報告書も、国内では焼却以外のPFAS分解技術について、商業規模での適用がまだ限られていることを課題として示している。

環境省|PFAS分解・処理技術の実証結果報告書

埋め立ては、問題を未来へ送ることにならないか

PFASを含む廃棄物を埋立処分する場合、PFASそのものが分解されるわけではない。

管理された処分場には遮水設備や浸出水処理設備が設けられているが、長期的には、廃棄物からPFASを含む水が浸出する可能性を考える必要がある。

浸出水を活性炭で処理すれば、再び使用済み活性炭が発生する。

その活性炭を焼却するのか。
再生するのか。
別の場所へ保管するのか。

PFASは、一つの施設から次の施設へ移動しながら、管理の連鎖をつくる。

米国環境保護庁が2026年に更新した暫定指針でも、PFASを含む物質の焼却、埋め立て、地下圧入などについて、環境への再放出を最小限にする管理と、処理方法ごとの不確実性が整理されている。

海外の制度をそのまま日本へ適用することはできないが、「最終処分した後もPFASの行方を追う」という視点は共通している。

米国環境保護庁|2026 Interim Guidance on PFAS Destruction and Disposal

除去率だけでは、技術を評価できない

PFAS対策技術は、しばしば「何%除去できたか」という数字で紹介される。

もちろん、処理水の濃度を下げる能力は重要である。

しかし、除去率だけでは見えないものがある。

例えば、99%を除去できる設備でも、残りの1%が大量の処理水とともに流出する可能性がある。

一方、PFASを高濃度に集めることができても、濃縮物を安全に処理できなければ、問題は解決しない。

評価すべきなのは、次のような項目である。

  • 処理水に残るPFAS
  • 短鎖PFASへの対応
  • 活性炭や樹脂に移ったPFAS
  • 濃縮水や洗浄排水
  • 焼却時の排ガス
  • 灰やばいじん
  • 分解途中に生じる物質
  • エネルギー消費
  • 二酸化炭素排出量
  • 運搬中の漏出リスク
  • 長期的な運転費用

入口と出口の一部だけを測るのではなく、処理工程全体でPFASやフッ素の収支を確かめる必要がある。

誰が処理費用を負担するのか

PFAS対策には、長期的な費用が発生する。

地下水や河川が汚染されていれば、水道事業者は取水を停止する、別の水源と混合する、浄水処理設備を導入するといった対応を迫られる。

しかし、別の水源を確保できる地域ばかりではない。

活性炭処理を続ける場合、原水にPFASが含まれている限り、交換と処分の費用が発生し続ける。

発生源と原因者が特定されていれば、費用負担を求める議論ができる。

だが、第二弾で見たように、地下水汚染では原因の特定が難しい。

過去の事業者が存在しない。
複数の発生源が重なっている。
使用記録が残っていない。
法規制が整う前に排出されていた。

原因者が特定できなければ、自治体や水道事業者が対策費を負担し、その費用が税金や水道料金に反映される可能性がある。

私有井戸では、所有者自身が浄水器の設置、フィルター交換、水質検査、代替水の購入を負担することも考えられる。

汚染を生み出した人と、対策費を支払う人が一致しない。

PFAS問題には、この環境正義の問題が横たわっている。

家庭用浄水器だけで解決できるのか

PFASへの不安が広がれば、家庭用浄水器に関心が集まる。

活性炭や逆浸透膜を使った製品の中には、一定の条件でPFAS濃度を低下させるものもある。

しかし、すべての浄水器がPFAS除去性能を持つわけではない。使用期間や水質によって性能が変わり、カートリッジを適切に交換しなければ除去能力は低下する。

そして家庭でも、PFASを吸着した使用済みカートリッジが生まれる。

家庭用浄水器は、個人のばく露を減らすための選択肢にはなり得る。

だが、地域全体の地下水汚染を解決するものではない。

水道水の安全という公共的な責任を、浄水器を購入できる個人だけに委ねれば、経済状況によって安全な水へのアクセスに差が生まれる。

本来必要なのは、個人の自衛だけではなく、汚染源の調査、原水の監視、浄水処理、廃棄物管理を一体化した社会的な対策である。

汚染を「見えない場所」へ移さないために

蛇口の水が基準値を下回ることは、住民の健康を守るために欠かせない。

まず飲用によるばく露を防ぐ。

その優先順位は変わらない。

しかし、蛇口の数値が下がった瞬間に、PFAS問題が終わるわけではない。

使用済み活性炭はどこで保管されているのか。
誰が運んでいるのか。
どの施設で再生・焼却されているのか。
排ガスや灰は測定されているのか。
濃縮水はどのように処理されているのか。
その費用を誰が負担しているのか。

こうした情報も、水質検査の結果と同じように社会へ示される必要がある。

処理の出口が見えなければ、汚染を浄水場の外へ移しただけなのか、本当に分解・管理できたのかを住民は判断できない。

「取り除いた」で終わらせない

PFASは、水から取り除くことができる。

だが、取り除いたPFASは、別の場所に残る。

活性炭に集めれば、使用済み活性炭を処理しなければならない。
膜で分ければ、濃縮水を処理しなければならない。
樹脂を再生すれば、再生廃液を処理しなければならない。
焼却すれば、排ガスや灰を確認しなければならない。

一つの工程の出口は、次の工程の入口になる。

だからこそ、PFAS対策では「水がきれいになったか」だけでなく、「取り除いた物質を最後まで追跡できているか」が問われる。

水からPFASを除去する。
PFASを少量に集める。
集めたPFASを安全に分解・処理する。
処理後の排ガス、排水、残さを測定する。
その記録を残し、社会へ共有する。

この一連の流れがつながって、初めて対策と呼べる。

浄水は、問題の終点ではない。

私たちの目に見えなくなったPFASが、その後どこへ行ったのか。

そこまで見届ける責任が、社会にはあるのではないだろうか。


参考資料

※この記事は2026年8月時点で公表されている情報をもとに構成しています。

この問題を、あとで改めて考えるために。
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