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まちは“使い捨て”から“循環”へ─サーキュラーエコノミーが変える地域産業

循環する都市と地域産業を象徴する立体的な街並みに、光のラインと「まちは、価値をめぐらせる場所になる。」というコピーが重ねられたアイキャッチ画像

まちは、消費する場所だった。

商品が運ばれてくる。人が買う。使う。捨てる。そして、また新しいものが運ばれてくる。

この流れは、あまりにも当たり前だった。

便利で、速くて、わかりやすい。けれど、その裏側には、大量の資源、大量の廃棄物、そして地域の外へ流れ出ていく価値があった。

いま、その前提が少しずつ変わり始めている。

ものを買い、使い、捨てるだけのまちから、資源をめぐらせ、価値をつくり直すまちへ。

サーキュラーエコノミーは、環境活動の言葉であると同時に、地域産業を再設計するための新しい経済の言葉でもある。

Contents

サーキュラーエコノミーとは何か

サーキュラーエコノミーとは、資源を一度使って終わらせるのではなく、生産、消費、回収、再利用、再資源化のあらゆる段階で、できるだけ循環させていく経済の考え方である。

従来の経済は、よく「リニア型」と呼ばれる。

つくる。売る。使う。捨てる。

まっすぐに流れていく経済だ。

一方、サーキュラーエコノミーは、その流れを円環に変えようとする。

捨てられていたものを、もう一度素材にする。

余っていたものを、別の誰かの資源にする。

使われていなかった場所や道具、技術、人のスキルに、もう一度価値を与える。

つまり、循環とは、単なるリサイクルではない。

地域の中で見過ごされてきた資源を見つけ直し、経済の中に戻していく編集作業でもある。

環境対策から、産業政策へ

サーキュラーエコノミーという言葉を聞くと、まず思い浮かぶのは環境問題かもしれない。

プラスチックごみを減らす。廃棄物を減らす。資源を大切に使う。

もちろん、それは重要だ。

しかし、いま日本で起きている動きは、もう少し広い。

サーキュラーエコノミーは、環境対策であると同時に、産業政策になり始めている。

経済産業省は、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、国、自治体、大学、企業、業界団体などが連携する「サーキュラーパートナーズ」を立ち上げている。個社だけでは経済合理性を確保しにくい領域だからこそ、関係主体の連携が必要だという考え方だ。

これは、地域にとって大きな意味を持つ。

循環は、一社だけでは完結しない。

素材を出す企業がいる。

回収する事業者がいる。

再資源化する技術がいる。

それを使って新しい商品をつくる企業がいる。

使い手となる生活者や地域コミュニティがいる。

つまり、サーキュラーエコノミーは、地域の産業を横につなぎ直す仕組みでもある。

横浜が示す、循環する都市のかたち

横浜では、「Circular Yokohama」というプラットフォームが展開されている。

そこでは、従来のリニア型経済の中で見過ごされてきたモノやサービス、個人のスキルなどの資源に光をあて、地域内における資源循環をつくり出すことが掲げられている。

この視点は、非常にNEOTERRAIN的だ。

なぜなら、ここで語られている循環は、単なる廃棄物処理ではないからだ。

まちに眠っている価値を見つける。

使われなくなったものに、別の役割を与える。

個人のスキルや小さな活動を、地域の資源として見直す。

それは、都市を巨大な消費装置として見るのではなく、複数の資源がめぐる生命体として捉え直す試みである。

まちは、捨てる場所ではない。

まちは、価値がもう一度かたちを変える場所になる。

埼玉県が進める、資源循環と産業成長の両立

埼玉県でも、サーキュラーエコノミーを県内産業の成長と資源循環の両立として位置づける動きが進んでいる。

県は、サーキュラーエコノミー型ビジネスのリーディングモデル構築に向け、製品開発などを支援する補助金を設けている。

ここで重要なのは、「環境に良いことをしましょう」という道徳だけではない点だ。

資源循環に配慮した製品設計。

解体しやすい構造。

単一素材化。

素材転換。

再生材を活用した新しいビジネスモデル。

こうした取り組みは、製造業の競争力そのものに関わってくる。

これからのものづくりは、性能や価格だけでなく、「どうつくられ、どう使われ、どう循環するか」まで問われるようになる。

つまり、サーキュラーエコノミーは、地域企業にとって新しいブランド価値にもなる。

“ごみ”は、本当にごみなのか

サーキュラーエコノミーの面白さは、ものの見方を変えるところにある。

ある人にとっては、いらなくなったもの。

ある企業にとっては、余ってしまった素材。

ある地域にとっては、処理に困っている廃棄物。

しかし、別の視点から見ると、それはまだ使える資源かもしれない。

廃材は、家具になるかもしれない。

食品残さは、肥料やエネルギーになるかもしれない。

古い制服や布は、新しい繊維製品になるかもしれない。

使われなくなった建物は、工房や店舗やコミュニティスペースになるかもしれない。

サーキュラーエコノミーとは、「これはもう終わった」と思われていたものに、次の役割を与える思想でもある。

終わりを、始まりに変える。

廃棄を、資源に変える。

コストを、産業に変える。

そこに、地域経済の新しい可能性がある。

循環は、地域の関係性をつくり直す

循環という言葉は、ものの流れだけを指しているように見える。

しかし実際には、人と人、企業と企業、行政と住民の関係性もつくり直す。

たとえば、地域の飲食店から出る食品残さを、農家が堆肥として使う。

その農家が育てた野菜を、また地域の飲食店が使う。

工場から出る端材を、地域のデザイナーが商品化する。

学校や市民が、そのプロセスを学び、体験する。

このような循環が生まれると、地域の中に新しい会話が生まれる。

「捨てる前に、誰かが使えないか」

「余っているものを、別の価値に変えられないか」

「地域の中で、もう一度めぐらせられないか」

その問いが、産業と暮らしをつなげていく。

サーキュラーエコノミーは、資源の循環であると同時に、関係の循環でもある。

地域ブランドは、“何を売るか”から“どうめぐらせるか”へ

地域ブランディングは、これまで「何を売るか」を中心に考えられてきた。

名産品。

観光地。

歴史。

食文化。

美しい風景。

もちろん、それらは今も重要だ。

しかし、これからは「どうめぐらせているか」も地域ブランドになっていく。

地域の資源を、どのように使い続けているのか。

廃棄されていたものを、どのように価値に変えているのか。

企業、行政、住民、クリエイターが、どのように連携しているのか。

環境と経済を、どのように両立させているのか。

その仕組み自体が、地域の魅力になる。

つまり、サーキュラーエコノミーは、商品の裏側にある物語を変える。

ただ「地元で作りました」ではない。

「地域の中で資源をめぐらせながら作りました」へ。

その違いは、これからの消費者にとって大きな意味を持つ。

“循環するまち”は、若い世代にどう映るか

Z世代や若い生活者にとって、環境配慮はもはや特別な価値ではなく、前提になりつつある。

ただ安いから買う。

ただ便利だから使う。

ただ有名だから選ぶ。

そうした消費行動だけではなく、その商品やサービスが、どんな背景を持っているのかを見ようとする人が増えている。

どこで作られたのか。

誰が関わっているのか。

使い終わったあと、どうなるのか。

地域にどんな循環を生んでいるのか。

この問いに答えられる地域や企業は、単なる商品価値を超えた信頼を得ることができる。

循環するまちは、若い世代にとって「関わる理由」のあるまちになる。

働く場所として。

暮らす場所として。

学ぶ場所として。

何かを始める場所として。

サーキュラーエコノミーは、地域に新しい参加の入口をつくる。

課題は、きれいな理念を経済に変えられるか

もちろん、サーキュラーエコノミーには課題もある。

回収にはコストがかかる。

分別には手間がかかる。

再資源化には技術が必要になる。

再生材を使った商品が、必ずしも安く作れるとは限らない。

生活者が選び続けるには、品質、デザイン、価格、使いやすさも求められる。

つまり、循環は理念だけでは続かない。

経済として成立させる必要がある。

そのためには、行政の支援、企業の技術、生活者の参加、クリエイターの編集力が必要になる。

環境に良いから、ではなく、使いたいから選ばれる。

社会に良いから、ではなく、魅力があるから広がる。

サーキュラーエコノミーが地域産業になるためには、この転換が欠かせない。

まちは、資源の記憶を持っている

地域には、必ず何かが眠っている。

使われなくなった素材。

受け継がれてきた技術。

余っている空間。

廃棄されてきた副産物。

まだ言語化されていない人のスキル。

それらは、目立たない。

けれど、編集すれば資源になる。

組み合わせれば産業になる。

物語にすれば、地域のブランドになる。

まちは、資源の記憶を持っている。

サーキュラーエコノミーとは、その記憶をもう一度掘り起こし、未来の経済へつなげる行為なのかもしれない。

使い捨ての先に、地域の未来はあるか

大量に作り、大量に売り、大量に捨てる。

そのモデルは、かつて豊かさの象徴だった。

しかし今、資源制約、気候変動、地政学リスク、人口減少、地域産業の縮小といった課題が重なり、同じモデルを続けることは難しくなっている。

だからこそ、地域は問い直す必要がある。

何を捨ててきたのか。

何を見過ごしてきたのか。

何をもう一度、めぐらせることができるのか。

サーキュラーエコノミーは、未来のためのきれいな標語ではない。

それは、地域が自分自身の資源を見つめ直し、産業をつくり直すための現実的な設計図である。

まちは、“使い捨て”から“循環”へ。

消費する場所から、価値をめぐらせる場所へ。

地域産業の未来は、捨てられていたものの中に、すでに眠っているのかもしれない。


参考
※1 経済産業省 関東経済産業局「循環経済(サーキュラーエコノミー)」
※2 Circular Yokohama「横浜のサーキュラーエコノミーを加速する」
※3 埼玉県「県内企業のサーキュラーエコノミーを推進! 製品開発等の補助金3種の募集を開始します」
※4 Circular Economy Hub「サーキュラーエコノミーによる産業創出シンポジウム in 埼玉」

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