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流氷が減ると、知床の海はどう変わるのか——北海道・オホーツク海から考える自然環境

北海道・オホーツク海の流氷と青い海を描いたイラスト。「流氷は、海を育てている。」の文字入り
北海道・オホーツク海の流氷と青い海を描いたイラスト

47都道府県の自然環境問題|第1回・北海道

冬のオホーツク海を白く埋める流氷。観光のポスターやニュース映像では、北海道の冬を象徴する風景として紹介される。けれども、流氷は景色だけではない。氷の下では小さな生き物が育ち、春には海の食物網が動き出す。その変化は、魚や海鳥、そして知床の森にまでつながっている。

いま、オホーツク海の海氷は長期的に減少している。流氷の変化を、海に浮かぶ氷の面積だけでなく、地域を支える「季節の仕組み」の変化として見てみたい。

Contents

流氷は、北海道で生まれるとは限らない

オホーツク海の海氷は例年、北部から形成され、風や海流の影響を受けながら南下する。北海道の沿岸で見える流氷は、海の向こうで始まった季節の動きが届いた姿だ。気象庁によれば、流氷とは海上を流れ漂う氷を指す。北海道沿岸で氷が見えた日と、オホーツク海全体でどれだけ氷が広がったかは、同じ指標ではない。

この違いは、環境の変化を読むうえで大切だ。風向きによって氷が岸に集まれば、ある町からは流氷がよく見える。逆に沖へ離れれば、海全体に氷があっても岸からは見えにくい。一冬の風景だけで「流氷が増えた」「消えた」と判断することはできない。

数字が示す、長い時間の変化

気象庁が2026年に公表した診断では、オホーツク海の年最大海氷域面積は、1971年から2026年までの観測で長期的に減少している。その傾向は10年当たり約5.9万平方キロメートル。オホーツク海の全面積の約3.7%に相当する。ただし年ごとの変動は大きく、気温だけでなく風や海水温にも左右される。気象庁は、長期的な減少に地球温暖化が影響している可能性を示しつつ、その関連をより確実に評価するにはデータの蓄積が必要だとしている。

2025/26年のシーズンには、最大海氷域面積が統計開始以降で2番目に小さかった。一方、北海道オホーツク海沿岸への流氷の到来はおおむね平年並みだった。海全体の氷が少ない年でも、沿岸での到来時期は必ずしも同じように変化しない。この二つの事実を並べると、観光地で見る流氷の印象と海全体の状態を分けて考える必要が見えてくる。

氷が育てる、春の海

知床が世界自然遺産として評価された理由の一つは、季節海氷の影響を受ける豊かな海と、川、森とのつながりにある。

環境省の説明によれば、海氷が形成される過程で海水の混合が起こり、深いところの栄養が表層へ運ばれる。氷の下では植物プランクトンなどが育ち、春に氷が融け始めると植物プランクトンが増える。それを動物プランクトンが食べ、さらに魚や海鳥、海棲哺乳類などへと食物網がつながっていく。

もちろん、「氷が何平方キロメートル減ったから魚が何%減る」と、単純に換算できるわけではない。海水温、海流、漁業、魚種ごとの生態も関わる。それでも、流氷の形成や融解の時期が変われば、春の海で餌が生まれる時期や場所に影響する可能性がある。氷の変化は、知床の生態系を考えるための重要な手がかりなのだ。

「今年も流氷が来た」だけでは見えないもの

流氷は、来たか来なかったかという二択では捉えられない。いつ形成され、どこまで広がり、どのくらい続き、いつ融けるのか。その組み合わせが、海の季節をつくっている。

気象庁の『日本の気候変動2025』によると、網走では、観測データがそろう1946年から2021年までの期間に、流氷が初めて見えた日は10年当たり約1.3日遅く、最後に見えた日は約3.6日早くなる傾向があった。これは網走の沿岸観測に関する値であり、知床の海域全体や漁獲への影響をそのまま表すものではない。それでも、流氷の「滞在する時間」に目を向けるきっかけになる。

2024年度の知床世界自然遺産地域の報告でも、流氷期間の減少傾向と生態系への影響の懸念が示され、関係機関は気候変動に対応するための順応的管理戦略を策定した。変化を観測し、結果を見ながら管理の方法を見直していく。その姿勢が必要になっている。

守るべきものは、白い景色の向こうにある

流氷は北海道の観光資源であり、冬の記憶でもある。しかし、その価値を風景だけで語ると、氷の下で起きていることを見落としてしまう。

海氷の長期的な減少が確認されている一方で、個々の年の流氷の到来も、生き物への影響も、単一の数字では説明できない。だからこそ、海氷、プランクトン、魚、海鳥、地域の営みを、別々の話として切り離さずに追い続ける必要がある。

北海道の自然環境問題を考える第1回で、流氷を選んだ理由はそこにある。目に見える白い氷の変化は、目に見えにくい海の働きを知る入口になる。来年の冬、流氷のニュースに触れたとき、「今年は見えたか」だけでなく、「海ではどんな季節が始まっているのか」と問い直してみたい。


参考資料

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