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再生骨材でも、CO₂はゼロにならない—コンクリートに隠れたセメントの環境負荷

解体されたコンクリート塊と都市の建物を背景に、「骨材は、めぐる。CO₂は、残る。」と表現したイメージ
解体されたコンクリート塊と都市の建物を背景に、「骨材は、めぐる。CO₂は、残る。」と表現したイメージ

都市を見渡せば、道路、橋、堤防、トンネル、マンション、オフィスビルなど、あらゆる場所にコンクリートがある。

コンクリートは、近代社会の安全性と利便性を支えてきた。災害に耐える構造物をつくり、都市を高層化し、山や海を越えて人と物を結んできた素材である。

一方、建物やインフラの解体が増えるなか、使用済みコンクリートを砕いて「再生骨材」として利用する動きも進んでいる。

廃棄物を減らし、天然の砂利や砕石の採取を抑える。その意味で、再生骨材は建設資源を循環させる重要な技術だ。

しかし、ここで一つの疑問が残る。

骨材を再利用すれば、コンクリートは本当に環境に優しい素材になるのだろうか。

実は、コンクリートの環境負荷を考えるうえで、骨材だけでは見えない問題がある。

それが、コンクリートを固める「セメント」である。


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コンクリートの大部分は骨材でできている

コンクリートは、主に次の材料からつくられる。

  • セメント
  • 砂利や砕石
  • 必要に応じて加える混和材・混和剤

体積の多くを占めるのは、砂や砂利などの骨材である。

そのため、解体したコンクリートから骨材を取り出し、新しいコンクリートに再利用すれば、天然資源の採取量を減らせる。最終処分場へ送られる廃棄物や、新たな採石による地形・生態系への影響も抑えられる。

ただし、骨材だけではコンクリートは固まらない。

砂や砂利を一体化させ、構造物としての強度を生み出すのがセメントだ。再生骨材を使用する場合でも、多くの用途では新しいセメントが必要になる。

つまり、骨材が循環しても、セメントをつくる段階でCO₂が排出される構造は残る。


セメントはなぜ大量のCO₂を排出するのか

セメントの主要な中間製品である「クリンカ」は、石灰石や粘土などを回転窯で焼成してつくられる。

その温度は、およそ1450℃に達する。

ここで発生するCO₂には、大きく二つの原因がある。

一つは、窯を高温に保つために石炭などの燃料を使用することで発生する「エネルギー由来」のCO₂である。

もう一つが、石灰石を加熱したときに起こる化学反応だ。

石灰石の主成分である炭酸カルシウムは、加熱によって酸化カルシウムとCO₂に分かれる。

CaCO₃ → CaO + CO₂

これは「脱炭酸反応」と呼ばれる。

環境省の会議資料では、日本のセメント製造時のCO₂について、原料の脱炭酸が約55%、エネルギー由来が約35%、電力由来が約10%を占めるとの試算が示されている。

また、2018年度のデータでは、セメント1トンの製造によって約700キログラムのCO₂が排出されていた。環境省「セメント産業における二酸化炭素回収技術の検討」

重要なのは、燃料を再生可能エネルギーや低炭素燃料へ転換するだけでは、原料由来のCO₂をなくせないという点だ。

セメント産業の脱炭素化が難しいのは、単に大量の熱を必要とするからではない。現在の製造方法では、石灰石をセメントへ変える化学反応そのものからCO₂が生まれるのである。


再生骨材が解決する問題と、解決できない問題

再生骨材には、明確な環境的価値がある。

天然骨材の採取を抑え、解体コンクリートの廃棄量を減らし、地域内で循環させれば輸送距離も短縮できる可能性がある。

しかし、再生骨材は万能ではない。

再生骨材によって抑えられるもの再生骨材だけでは残るもの
天然の砂・砂利・砕石の採取新しいセメントの製造
コンクリート塊の最終処分石灰石の脱炭酸によるCO₂
採石や埋立てによる環境負荷高温焼成に必要なエネルギー
条件次第で資材輸送の負荷建物の解体・再建に伴う総排出量

「再生材を使った」という事実だけで、そのコンクリートが低炭素だとは判断できない。

骨材の再生率だけでなく、セメントの使用量、混和材の種類、製造時のエネルギー、輸送距離、耐久性、構造物の使用期間まで含めて評価する必要がある。


セメントの量を減らすという考え方

現在、コンクリートの低炭素化で広く検討されているのが、クリンカやセメントの一部を別の材料に置き換える方法だ。

代表的なものには、製鉄工程で発生する高炉スラグ微粉末や、石炭火力発電所から出るフライアッシュなどがある。

これらの産業副産物を活用すれば、新たに製造するクリンカの量を減らし、コンクリート1立方メートル当たりのCO₂排出量を抑えられる。

一方で、置換率を高めればよいとは限らない。

コンクリートに求められる強度、硬化速度、耐久性、施工条件は、建物やインフラの用途によって異なる。また、高炉スラグやフライアッシュは他産業の副産物であるため、製鉄・発電の産業構造が変われば、将来も同じ量を安定して調達できるとは限らない。

低炭素化には、材料の性能だけでなく、供給量や地域性まで考える必要がある。


CO₂を閉じ込めるコンクリート

コンクリートは、製造時にCO₂を排出する一方、硬化後には大気中のCO₂と反応して、その一部を内部に取り込む性質を持つ。

これが「炭酸化」である。

近年は、この反応を意図的に利用し、回収したCO₂を製造時や養生時にコンクリートへ固定する技術が開発されている。

セメント使用量を減らしながら、CO₂を炭酸カルシウムなどの安定した形で内部に固定する。環境省の資料でも、石炭灰や高炉スラグ、CO₂由来材料などを活用した複数の環境配慮型コンクリートが紹介されている。環境省「環境配慮型コンクリートによるCO₂削減効果の定量化」

NEDOも、コンクリートやセメント、炭酸塩へのCO₂固定は、大規模な削減につながる可能性があるとして、技術開発と実証を進めている。NEDO「CO₂を用いたコンクリート等製造技術開発」

ただし、「コンクリートはCO₂を吸収するから問題がない」と考えるのは早い。

自然に進む炭酸化の量は、コンクリートの配合、表面積、湿度、使用環境、解体後の粒径などによって異なる。鉄筋コンクリートでは、炭酸化による内部のアルカリ性低下が鉄筋腐食の原因になることもある。

吸収量と排出量を同じ条件で算定し、ライフサイクル全体で検証することが不可欠である。


壊して再生する前に、長く使えないか

低炭素コンクリートの開発は重要だ。

しかし、さらに手前にある選択肢も見逃せない。

そもそも、まだ使える建物を壊さず、長く利用できないか。

建物を解体すれば、コンクリート塊を再生骨材として利用できる。だが、新しい建物を建てるためには、再びセメントや鉄、ガラス、アルミなどを製造し、現場まで運ばなければならない。

それならば、既存の構造体や基礎を生かし、改修や用途変更によって建物の寿命を延ばした方が、資材製造に伴うCO₂を抑えられる場合がある。

国土交通省も、建築物のライフサイクルカーボンを削減する方法として、既存建物・既存基礎の活用、低炭素材料の採用、資材数量の削減、長寿命化、解体しやすい設計などを挙げている。日本では2028年度を目標に、建築物LCAの実施を促す制度の開始も予定されている。国土交通省「建築物のライフサイクルカーボン」

これからの建築には、「完成時にどれだけ省エネか」だけでなく、材料の製造から施工、使用、改修、解体までを通した評価が求められる。


循環とは、何度もつくり直すことではない

再生骨材は、建設廃棄物を資源へ戻す重要な技術である。

だが、それだけでコンクリートの環境負荷がなくなるわけではない。骨材の背後には、石灰石の採掘、高温焼成、脱炭酸反応、輸送、施工という別の環境負荷が存在する。

必要なのは、一つの技術を「環境に優しい」と切り取ることではない。

  • 天然資源の採取を減らす
  • セメントの使用量を抑える
  • 低炭素材料を適材適所で使う
  • 製造時に発生したCO₂を回収・固定する
  • 構造物を修繕しながら長く使う
  • 解体後の再利用まで設計段階で考える

これらを重ね合わせることで、初めて建設の循環は現実に近づく。

都市を循環させるとは、建物を壊し、同じ場所に新しい建物を建て続けることではない。

すでにあるものを生かし、必要なものだけをつくり、使い終えた材料を次へ渡すこと。

コンクリートの脱炭素化が問いかけているのは、素材の技術だけではない。

私たちが、都市の「新しさ」と「豊かさ」をどう定義するのかという、社会そのものの選択なのである。

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