京都・伏見。350年以上の歴史を持つ酒蔵が、いま“アートプロジェクト”として再解釈されている。
玉乃光酒造が、クリエイティブ集団 Skeleton Crew Studio と共同で進める 「350×プロジェクト」。
日本酒を単なる酒ではなく、 「アートと物語を宿すメディア」として捉え直す試みだ。
2026年3月に発表されたシリーズ第4弾のテーマは、「真実」。
台湾・韓国・京都を中心に活動する6名のクリエイターが参加し、 それぞれの視点で“真実”をラベルに封じ込めた。
日本酒は「時間の芸術」
日本酒は、米・水・麹・酵母・時間という いくつもの要素が絡み合うことで生まれる。
つまり発酵とは、 目に見えない変化の積み重ねだ。
今回のプロジェクトでは、 玉乃光酒造として初めて 酵母No.77を採用。
さらに
- 高酸度設計
- 高麹歩合
- 高酒母歩合
という、これまでのスタンダードを外れる酒造りに挑戦した。
結果として生まれた酒は、 白ワインのような酸味を持つ新しい日本酒。
伝統を守るのではなく、 伝統を使って未来を作る。
それが今回の試みの本質だ。
アートがラベルをキャンバスにする
このシリーズの特徴は、 酒瓶そのものをアートのキャンバスとして扱う点にある。
参加したのは、 台湾・韓国・日本のクリエイターたち。
- 韓国の3Dアーティスト Matsalworld
- 台湾のイラストレーター SAITEMISS
- 書家 上田普
- ゲームクリエイター nakajima
- 料理人 白山洸(熟成鮨 万)
- アーティスト Reiji
興味深いのは、 この参加者の多くが アーティスト同士の紹介の連鎖によって つながったことだ。
つまりこのプロジェクトは、 単なるブランドコラボではない。
クリエイターのネットワークそのものが作品になっている。
日本酒と料理人の哲学
今回のシリーズで特筆すべきは、 料理人の参加だ。
京都の熟成鮨店「万」の店主、 白山洸。
彼の哲学は「待つ技術」。
魚を寝かせ、 時間を味へと変える。
その思想は、 発酵というプロセスと驚くほど近い。
つまりこのプロジェクトは、
- 酒
- 料理
- アート
- ゲーム
といった異なる領域が 「時間」という共通テーマで 交差する実験でもある。
日本酒は文化産業になれるのか
近年、日本酒の輸出額は増加し、 海外市場でも注目を集めている。
しかし、 世界市場で勝つためには 単なる酒としてではなく 文化としての価値を 伝える必要がある。
その意味で 「350×プロジェクト」は、
日本酒 × アート × 国際ネットワーク
という新しい文化モデルを提示している。
酒は飲むだけのものではない。
それは 時間と思想を保存するメディアなのかもしれない。
京都の酒蔵で始まったこの実験は、 日本の文化産業の未来を 静かに示している。

