2025年冬、新潟県十日町市松之山に、新しい思想をまとった酒蔵 「雪と里山醸造所(Snow Satoyama Sake)」 が誕生する。
それは単なる日本酒の製造拠点ではない。 酒造りを「地域文化・自然・食」を横断する体験型の文化装置として再構築する挑戦だ。
本記事では、PR TIMESで発表されたリリースを基に、 この酒蔵が持つ社会的・文化的意義をNEOTERRAIN視点で読み解く。

「飲む」から「体験する」へ─酒蔵の役割は変わり始めている
雪と里山醸造所が掲げるコンセプトは、「体験する酒蔵」。 酒の味そのものだけでなく、 その背景にある雪国の自然、里山の営み、発酵文化を五感で感じてもらうことを目的としている。
計画されているプログラムには、麹仕込み体験、棚田での農体験、 里山トレイルウォーク、地域食材を用いたペアリング講座などが含まれる。
これは、日本酒がユネスコ無形文化遺産に登録された現在、 「日本酒をどう継承し、どう世界へ伝えるか」という問いに対する、 一つの具体的な回答と言えるだろう。

※出典:PR TIMES「雪と里山醸造所」開業リリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000492.000090796.html
女性が“ゼロから”立ち上げる酒蔵という挑戦
このプロジェクトを率いるのは、栄養士、日本酒学講師などの資格を持つ デュケット智美氏。
雪と里山醸造所は、女性が初代蔵元として新規に酒造免許を取得し、 独立創業するケースとしては極めて珍しい存在だ。
長らく男性中心だった日本酒業界において、 この取り組みは単なるジェンダーの話に留まらない。 「誰が文化の担い手になれるのか」という、 社会構造そのものへの問いかけでもある。

※出典:PR TIMES
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000492.000090796.html
里山と循環する酒造り──サステナビリティは思想から始まる
原料には、棚田で育てられた無農薬・減農薬米、 雪解け水、山菜やハーブなど、地域の自然資源が活用される。
また、エネルギー面では自然エネルギー100%を前提に、 雪室や地域バイオマスを活用する計画が進んでいる。
ここで重要なのは、サステナビリティが 「付加価値」や「流行語」として語られていない点だ。 酒蔵そのものが、地域循環の一部として設計されている。

※出典:PR TIMES
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000492.000090796.html
クラフトサケが切り拓く、次の日本酒像
試作段階で生まれたクラフトサケは、 松之山産の無農薬ハーブや「ふきのとう」など、 里山ならではの素材を取り入れた意欲作だ。
これらは国内のミシュラン星付きレストランで評価され、 2025年にはBBCでも紹介されるなど、 すでに国際的な注目を集めている。
伝統を壊すのではなく、 伝統の構造を理解した上で拡張する。 それが、雪と里山醸造所のクラフトサケに通底する思想だ。

NEOTERRAIN視点|酒蔵は「地域のメディア」になれるか
雪と里山醸造所の本質は、酒そのもの以上に、 「酒蔵という場が何を語れるか」にある。
自然、食、発酵、ジェンダー、サステナビリティ。 それらを束ね、体験として編集し、訪れた人の記憶に残す。
酒蔵は、もはや製造施設ではない。 地域の思想を発信する“メディア”になり得る。 雪と里山醸造所は、その可能性を静かに、しかし確かに示している。
本記事は、PR TIMES掲載の公式リリース情報を基に、 NEOTERRAIN Journal編集部が再構成・考察を加えたものです。

