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旅の再設計:なぜ トルコの観光マーケティング戦略が“5,000万人訪問”を実現したのか

地中海沿岸の港町と古代遺跡が夕日に照らされるトルコの風景。
トルコ地中海の夕陽(イメージ)

2025年第3四半期までに、トルコは外国人観光客数5,000万人、観光収入500億米ドルという成果を発表しました。この数字の背景には、単なる「観光立国」化ではなく、戦略的な観光マーケティング─ブランド構築・多市場展開・地域分散・高付加価値化がしっかりと機能しているという事実が見えてきます。本稿では、観光マーケティングという視点からトルコ戦略の「なぜ成功したか」を整理し、国内外の地域観光への示唆を考察します。


パムッカレ
Contents

1|成果の整理

トルコ政府による発表では、2025年第3四半期までに外国人訪問者数5,000万人(前年比+1.6%)観光収入500億米ドル(+5.7%)を達成。日本からの訪問者も12万2,663人(+24%)と好調です。訪問者の平均滞在日数は10.3泊、1泊あたり平均支出は103ドル。つまり、“数”だけでなく“質”の向上も実現したということです。 出典:トルコ共和国大使館 文化観光局 プレスリリース(PR TIMES)

トルコの観光は「拡大」と「深化」を両立させた稀有な成功モデル。データの裏にある戦略構造が注目されています。


2|成功要因:観光マーケティングの視点から

トルコの観光マーケティングは、いわば「ブランド × 市場 × 体験 × アクセス × サステナビリティ」の総合設計。以下の5要素がシナジーを生みました。

(A) ブランド/ポジショニング:多層的・クロスカルチャーの魅力

  • アジアとヨーロッパを結ぶ地理的ハブというポジションを活かし、「異文化の魅力×安心と居心地」を同時に訴求。
  • グローバルキャンペーン「Turkey Home」では、“家のような温かさ”をキーワードにブランドメッセージを統一。

(B) セグメンテーション/多市場展開

  • 上位送客国(ロシア・ドイツ・英国)に加え、中東・東欧市場も開拓。
  • 主要都市だけでなく、地中海沿岸などの地域を重点化し地域分散戦略を実施。
  • 「一本足打法」ではなく、複数市場のポートフォリオを形成。

(C) プロダクト/体験の多様化・高付加価値化

  • 都市・海岸・自然・歴史など、複数の魅力を組み合わせた“滞在型体験”を提供。
  • “短期・安価旅行”から“価値ある長期滞在”への転換(平均10.3泊/客単価103ドル)。
  • 文化体験や地域食文化など、滞在中の支出を増やす構造を整備。

(D) プロモーション/アクセス・安心の両立

  • SNS・デジタル広告・国際PRを通じて「安全でアクセスしやすい国」イメージを強化。
  • Turkish Airlinesとの連携により、グローバルな航空ネットワークと観光誘致を統合。
  • 「魅力ある観光先」であると同時に「行きやすい・安心して滞在できる国」としてブランドを確立。

(E) サステナビリティ・地域レジリエンス

  • 国家観光機関TGAが、GSTC(国際持続可能観光協議会)と連携。
  • ホテルや観光施設に対し段階的なサステナブル認証を義務化(2030年までに全国展開)。
  • “呼べる観光”から“呼び続けられる観光”へ。持続可能性をブランド価値に転換。

3|地域活用:日本への示唆

トルコの成功は、国内地域観光にも多くの示唆を与えます。

  • ブランド構築×ストーリーテリング:「地中海×東西交差文化」のように、地域固有の物語を明確化。
  • 多地域展開:主要観光地以外のオフピーク戦略・二次観光地誘導の重要性。
  • 体験価値向上:“行く”観光から“滞在し学ぶ”観光へ。地域文化や食、体験の質を高める。
  • アクセス・安心設計:情報発信・交通・言語サポートなどUX改善による心理的障壁の除去。
  • サステナブル制度設計:自治体×事業者が協働し、制度的に持続可能性を保証する仕組みを構築。

4|結びにかえて

トルコの観光戦略成功は、偶然ではなく構造的な観光マーケティング設計の成果です。
ブランド、体験、地域分散、多チャネル展開、持続可能性─それぞれが連鎖する「観光マーケティング・エコシステム」。
日本でも、“集客施策”から“価値の循環”へ。再訪を生む観光のあり方を再定義する時期にきています。


出典・参考


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