徳島県・祖谷が静かに試している、もうひとつの観光モデル
徳島県西部、深い山々に抱かれた祖谷。
有名な景勝地や独自の文化を持ちながら、この地には、どこか観光地らしくない空気が流れています。
バスが来て、写真を撮って、土産を買って帰る。
そんな「消費としての観光」だけでは、この土地の時間は、うまく動かない。
祖谷には、滞在しても、何も“買わずに帰る人”が少なくありません。
それでも、不思議と人はまた戻ってくる。
その理由は、観光地の設計思想そのものにありました。

「泊まる」より、「関わる」ことから始まる滞在
祖谷で広がっているのは、体験を“提供する”観光ではありません。
- 農作業を手伝う
- 空き家の修繕に参加する
- 囲炉裏を囲んで、ただ語り合う
それらはプログラム化されていないことも多く、マニュアルも、正解もありません。
あるのは、「ここにいる人として、時間を共有する」という感覚だけ。
観光客と住民、ホストとゲスト。
そうした境界線が、少しずつ曖昧になっていきます。

空き家は「宿泊施設」ではなく、関係の拠点になる
祖谷では、空き家が単なる宿に変わるだけではありません。
修繕の過程に人が関わり、滞在中に土地の記憶を聞き、帰ったあとも、連絡が続く。
空き家は、人が循環するための“関係インフラ”として機能しています。
結果として生まれるのは、一時的な消費額ではなく、
「また会いに行く理由」です。

観光は“商品”ではなく、“関係資産”になる
祖谷の試みは、派手な成功事例ではありません。
急激に人口が増えるわけでも、観光収入が跳ね上がるわけでもない。
けれど
- 顔と名前を知る人が増え
- 季節ごとに戻ってくる人がいて
- 外から来た人が、内側の課題を一緒に考える
そんな小さな関係の蓄積が、地域の時間を、確かに前へ進めています。
観光とは、「来てもらう仕組み」ではなく、
「戻ってきたくなる関係」を育てること。
祖谷は、その仮説を、山あいで静かに検証し続けています。

Soraのフィールド・ノート
消費は、その場限りで終わる。
関係は、時間を連れて帰っていく。
観光が“商品”である限り、地域は選ばれ続けなければならない。
けれど、観光が“関係資産”になったとき、
地域は、思い出され、戻られる場所になる。
祖谷で起きているのは、そんな観光の再定義です。
Youtubeチャンネル「NEOTERRAIN」と連動企画です。動画もチェック!
高知県篇

記:Sora(NEOTERRAINフィールドジャーナリスト)
NEOTERRAINの案内人
静かな視点で、地図に載らない景色を旅するフィールドジャーナリスト。
北の大地の牧場から、南の市場のざわめきまで。
人と社会の営みの中にそっと寄り添い、記憶と問いかけを言葉に残します。
この視点が、あなたの旅の地図になりますように。

