水は、外交になるか。
2026年2月17日、ナイロビ発。
日本政府とUNICEFは、ケニアの国境地域およびナイロビ郡の非公式居住区における 水と衛生サービスの改善を目的とする新たなパートナーシップを発表した。
総額6億2,600万円。
対象はナイロビ郡、ガリッサ郡、ブシア郡、ワジール郡。
期間は3年間。
学校や保健センターの設備改修、屋外排泄の根絶、 市場主導型の衛生改善、農村部給水のパイロット事業、 そして気候変動に備えた早期警戒システムの強化。
表面的に見れば、これは一つの人道支援プロジェクトだ。 だが、その奥には、もう一つの構造がある。

水と衛生は「保健」だけの問題ではない
安全な水と適切な衛生環境は、公衆衛生の基盤である。 だがそれ以上に、それは「国家のレジリエンス」を左右する。
- 感染症の拡大を防ぐ
- 子どもの就学率を高める
- 女性の安全と尊厳を守る
- 経済活動の持続性を支える
水はインフラであると同時に、社会の安定装置でもある。
TICADと日本の戦略
本事業は、2025年横浜で開催されたTICAD 9の優先事項と密接に連動している。 テーマは「革新的な解決策の共創をアフリカと共に」。
ここで重要なのは、日本が単なる資金提供国ではなく、 「技術と市場主導型モデルを輸出する国」として立ち位置を明確にしている点だ。
・プライマリ・ヘルスケア強化
・感染症予防
・UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)推進
水と衛生支援は、その入り口である。
人道か、外交か。
アフリカでは現在、中国・欧州・中東諸国によるインフラ投資が拡大している。
その中で日本は、「質」と「持続可能性」を軸にしたモデルを提示している。
今回の事業では、単なるインフラ整備に留まらず、 地方当局や女性・若者コミュニティへの能力育成が含まれる。
つまりこれは、 “ハード”ではなく“制度と人材”を育てる支援だ。
水は、物理的資源であると同時に、 信頼関係を築く媒介でもある。
市場主導型という意味
本事業では「市場主導型の衛生改善」が明確に打ち出されている。
これは援助モデルの転換を意味する。
支援する → 依存が生まれる
市場を育てる → 自立が生まれる
日本の技術とUNICEFの実装力。 その掛け合わせは、社会インフラの「持続可能性」を設計し直す試みだ。
NEOTERRAIN視点:これは水の話ではない
これは、国家の未来を設計する話である。
気候変動、感染症、人口増加、都市スラムの拡大。 これらの課題は、単独では解決できない。
水は、そのすべてに接続している。
そして日本は、そこに“技術外交”という形で関わろうとしている。
支援は、善意だけでは続かない。 戦略と持続可能性がなければ、意味を持たない。
問い
日本は、アフリカとどのような関係を築くのか。
資金提供国としてか。
技術パートナーとしてか。
それとも、未来を共に設計する共創者としてか。
水は、外交になり得る。
そしてそれは、次の時代の安全保障かもしれない。
引用元
国連児童基金(UNICEF)東京事務所 発表リリースより参照:
https://www.unicef.org/tokyo/
(2026年2月17日 ナイロビ発 日本政府との新パートナーシップ発表)

