人口900人。山と川に囲まれたこの小さな村は、
「ゆずの村」として全国に知られてきた。
しかし今、馬路村は“売るため”のゆずから、
“共に育てる”経済へと歩みを進めている。
香り高いゆず。
加工品、調味料、飲料。
その品質と物語は、都市の食卓にまで届いている。
けれど馬路村は、
「売れること」そのものをゴールにしない選択をした。

ゆずに頼りきれない未来を、恐れなかった
高齢化。
単価の低下。
後継者不足。
これは馬路村だけの問題ではない。
日本中の多くの地域が、同じ問いを抱えている。
このまま、作り続けるだけでいいのか。
「売れるもの」を作るだけで、村は続くのか。
馬路村は、その問いから目を逸らさなかった。
依存してきた構造を、いちど立ち止まって見つめ直した。

森とともに生きる、という原点回帰
馬路村の背後には、広大な森が広がっている。
かつて林業で栄え、
そして衰退も経験してきた土地。
今、森は再び「資源」として見直されている。
ただし、それは切り出して売るための資源ではない。
- 手入れされた森が生む、水と空気
- ゆず畑を支える生態系
- 人が滞在し、学び、関わる場としての森
森は、経済の“背景”ではなく、
経済の土台として再定義されている。

「消費」ではなく、「関係」を育てる観光へ
馬路村が描く観光は、
いわゆる「観光地化」とは少し違う。
大量に人を呼び込むのではなく、
関係が積み重なる人を迎える。
- ゆずの収穫を一緒に行う
- 加工や森の手入れを体験する
- 何度も訪れ、顔見知りになる
ここでは、訪問者は「お客さん」で終わらない。
村の営みに、少しずつ参加する存在になる。

「共に育てる」経済という選択
馬路村が目指しているのは、
単なる6次産業化でも、ブランディングでもない。
作る人と、使う人。
住む人と、訪れる人。
自然と、人の営み。
そのあいだに、
緩やかで、長く続く関係を編み直していく。
それは、
共創型の地域経済と呼べるものかもしれない。

次のかたちは、もう始まっている
「成功事例」として語るには、
この村の歩みは、あまりに静かだ。
派手なコピーも、急激な成長もない。
けれど、
続くかどうかという問いに対して、
馬路村は一つの答えを示している。
売るより、育てる。
消費より、関係。
依存より、選び直す勇気。
ゆずの香りの、その先で。
馬路村は、地域経済の「次のかたち」を、
今日も静かに育てている。
Sora’s Field Notes|現場から、未来の輪郭を記す
Youtubeチャンネル「NEOTERRAIN」と連動企画です。動画もチェック!
高知県篇

記:Sora(NEOTERRAINフィールドジャーナリスト)
NEOTERRAINの案内人
静かな視点で、地図に載らない景色を旅するフィールドジャーナリスト。
北の大地の牧場から、南の市場のざわめきまで。
人と社会の営みの中にそっと寄り添い、記憶と問いかけを言葉に残します。
この視点が、あなたの旅の地図になりますように。

