200年級の蔵の知恵を、現代のラーメンという器で再構築。NEOTERRAINは、「発酵=味・健康・地域」の三拍子が交差する最前線を追う。
導入─“発酵×ラーメン”が生む期待
霧島・福山の海風が抜ける古民家で、老舗醸造元が直営するラーメン店「伊達商店」が始動する。 江戸の頃から磨かれてきた麹と熟成の技を、一杯のラーメンに落とし込む試みだ。 「無添加・発酵・温もり」を掲げ、タレや調味料に黒酢・味噌・醤油といった蔵の柱を惜しみなく使う─ その構えは、ラーメン好きの心拍数を静かに上げていく。
老舗醸造元・伊達醸造が手がける初の直営ラーメン店。“無添加・発酵・温もり”をテーマに、地域の味を現代の感性で再構築。
すべてのタレ・調味料に伊達醸造の黒酢・味噌・醤油を使用。(出典:PR TIMES)

発酵文化の地層─麹がつくる「奥行き」
日本の和食は、味噌・醤油・酢・みりん・酒といった発酵の連鎖で支えられてきた。 なかでも麹菌はタンパク質やデンプンを分解し、アミノ酸や糖を生み出してうま味を複雑に重ねる。 これが「縦にも横にも味が広がる」感覚の源泉だ。(参考:農林水産省 aff特集「発酵」)
江戸から続く醸造の知恵は、保存技術であり、地域の気候風土を映す文化アーカイブでもある。 今、それがラーメンという大衆食のプラットフォームに乗り、再編集されようとしている。
ラーメンという器─“タレの設計”で発酵を通電させる
ラーメンの世界で、うま味の司令塔はタレ(かえし)だ。蔵仕込みの味噌・醤油に、黒酢の柔らかな酸味を一滴、二滴。 発酵が重ねたアミノ酸の厚みはコクを育て、黒酢は後味をすっと整える。結果、「飲み干したくなるのに重くない」方向性が立ち上がる。
- 最初のひと口:立ちのぼる香りと輪郭のあるうま味。
- 中盤:麹由来の甘み・まろみがスープの骨格を厚くする。
- 余韻:黒酢のニュアンスでキレが生まれ、後味が軽やかに。
※具体のメニュー・コンセプトは下記PR TIMESのリリースをご参照ください。
“罪悪感”をほどく視点─発酵とからだ
発酵食品は、腸内環境や栄養価、保存性に関して有用な変化をもたらすと一般に説明される。 味噌・醤油・酢などの発酵調味料が、食事全体の満足感とバランスに寄与する可能性は、生活者の認識としても広がっている。(参考:MAFF aff「日本の食文化」発酵特集/日本醸造協会誌・味噌研究動向レビュー)
※健康効果は食事全体・個々の体調により個人差があります。医学的助言を目的とした記述ではありません。
NEOTERRAIN視点─「余白」と「場所性」を味わう
発酵の本質は“時間の編集”にある。壺畑、蔵の湿度、麹の営み─その見えないプロセスが一杯の奥行きとなる。 桜島を望む古民家という「場所性」が、食体験に第三のレイヤー(記憶)を付与するのも面白い。 一杯をすすりながら、私たちは地域・時間・身体をつなぐ「余白」を味わっているのかもしれない。
体験ポイント─ラーメン好きへの“観察メモ”
- タレの第一印象:香りの立ち方と、塩味の下に潜む甘み・酸のバランス。
- スープの伸び:温度が下がる過程で、うま味がどう変化するか。
- 後味の軽さ:黒酢や熟成由来のキレで、余韻がどう整うか。
- 場所の記憶:古民家・海・桜島─景色が味に与える心理的効果。
出典・参考
- PR TIMES| 創業200年の“発酵の技”を一杯のラーメンに。霧島市福山に「伊達商店」が11月7日グランドオープン(2025年11月5日)
- 農林水産省 aff 特集|日本の食文化に欠かせない「発酵」の世界(麹の役割)
- 農林水産省 aff|「日本の食文化」2022年11月号 発酵特集
- 日本醸造協会誌 レビュー|令和3年における味噌の研究業績(総説PDF)
Text © NEOTERRAIN Journal
本記事は公開資料を基に編集したデスク取材コンテンツです。現地体験・メニュー詳細は店舗の最新情報をご確認ください。

