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観光は「見るもの」から「演じるもの」へ─名古屋・柳原通商店街で始まる、現代版・明治維新型マーケティング

名古屋の商店街を舞台に、人々が行き交う夕暮れの街並み。観光が「見るもの」から「体験するもの」へと変わる瞬間を象徴する風景。

地域を舞台に、観光客が“物語の登場人物”になる。 名古屋・柳原通商店街で始まった体験型演劇プロジェクトは、観光とマーケティングの前提を静かに覆そうとしている。

2025年12月、プレイング株式会社は、名古屋市の柳原通商店街を舞台にした体験型演劇コンテンツ 『エンタビ(R)』の開催を発表した。 地域住民が演者となり、観光客自身も物語の一部として参加する、いわゆるイマーシブ(没入型)演劇である。

「観光客は観客ではなく、物語の登場人物として参加することで、地域の魅力を“体験”として深く記憶に残す」出典: PR TIMES|プレイング株式会社 プレスリリース

平城宮跡歴史公園 平城宮いざない館で現在、不定期上演中の観光客参加型ドラマアトラクション「エンタビ(R) 平城遷都誘宵記」2025年11月集合写真
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ゲリラ・マーケティングとしての「演劇型観光」

この取り組みが興味深いのは、従来の観光プロモーションとは真逆の構造を持っている点だ。 広告で集客し、名所を消費してもらうのではない。 物語に巻き込み、体験そのものを「語りたくなる記憶」に変えていく。

参加者は、あらかじめ完成されたストーリーを見るのではなく、 地域住民との即興的なやりとりの中で、自分自身の体験を紡いでいく。 これは予測不能で、再現性が低く、だからこそ強い。

ゲリラ・マーケティングの本質は、 「広告で伝えること」ではなく「人が語りたくなる状況をつくること」にある。 『エンタビ(R)』は、まさにその構造を地域観光に持ち込んだ試みだと言える。

地元学生たちと企画会議をするプレイング株式会社代表 山本知史 2025年11月撮影

明治維新に学ぶ「価値転換」の構造

ここで、少し視点を歴史に移してみたい。 19世紀半ば、日本は黒船来航という外圧をきっかけに、 江戸時代の価値観を根底から揺さぶられた。 明治維新とは、単なる政権交代ではなく、 「何を価値とする社会なのか」を再定義するプロセスだった。

興味深いのは、当時の志士たちが、 既存の制度や肩書きよりも「物語」や「思想」を武器に人を動かした点である。 藩という枠を超え、理念を共有し、行動を誘発していった。

『エンタビ(R)』が行っていることも、構造的にはよく似ている。 商店街という日常空間を舞台に、 住民と来訪者が一時的な“共同体”を形成し、 その場限りの物語を生み出す。

兵庫津ミュージアム バトルインヒョウゴノツ 地元出演者 2025年2月撮影

歴史は「保存」から「体験」へ

多くの地域観光が、歴史を「説明する対象」として扱ってきたのに対し、 この取り組みは、歴史や文化を体験可能なプロダクトへと変換している。

プレスリリースでは、地域住民との交流を体験した観光客は、 再訪率が大きく向上するという調査結果にも触れられている。

「地域住民との交流を体験した観光客は、再訪率が約1.7倍になるというデータもあります」出典: PR TIMES|プレイング株式会社 プレスリリース

歴史や文化を「学ぶもの」から「関わるもの」へ。 その転換点にこそ、これからの地方創生と観光マーケティングのヒントがある。

観光の未来は、物語の中にある

明治維新が、旧来の秩序を壊しながら新しい社会像を描いたように、 現代の地域もまた、「見せ方」を変えることで価値を再発見できる。

『エンタビ(R)』は、 大規模投資でも、派手な広告でもない。 しかし、人と人の関係性を編集することで、 観光そのものをアップデートしようとしている。

観光とは、場所を消費する行為ではない。 物語に参加し、記憶を持ち帰る行為なのだ。

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