観光名所や特産品だけでは、もはや地域の魅力は語り尽くせない。 そんな時代の空気を映すように、石川県小松市が自治体交流ファンサイト 「ふるさと生活」を公開した。
この取り組みは、日本の地方が本来持っている「日常の豊かさ」を掘り起こし、 国内の再認識を促すと同時に、インバウンドへの新たな影響力を生み出す可能性を秘めている。

「観光」ではなく「生活」を伝えるという選択
小松市が立ち上げた「ふるさと生活」は、いわゆる観光情報サイトとは一線を画す。 扱うテーマは、名所巡りやイベント告知ではなく、暮らしの中にある文化や営みだ。
「ふるさと生活」は、地域で暮らす人々の生活や文化、ものづくりの現場などを紹介し、 交流人口や関係人口の創出につなげることを目的とした自治体交流ファンサイトです。出典:PR TIMES「石川県小松市、自治体交流ファンサイト『ふるさと生活』をオープン」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000126983.html
そこに並ぶのは、伝統文化、職人の仕事、地域の食、そして人の物語。 「住む人の視点」で切り取られた情報は、観光パンフレットとは異なる温度感を持つ。
国内認知を「再起動」する装置としての地方メディア
日本の地方には、まだ十分に知られていない魅力が数多く存在する。 しかし問題は「情報がない」のではなく、 知っているつもりで、深くは知られていないことだ。
「ふるさと生活」が担う役割は、まさにこの認知の再起動にある。 観光地としての小松市ではなく、 「どんな日常があり、どんな価値観で人が暮らしているのか」を伝えることで、 地域への理解は一段深いレイヤーへと進む。
これは、地元外の日本人にとっても、 「日本の地方は、こんなにも多様で面白い」 という再発見のきっかけになるだろう。


インバウンドが求めているのは「生活の文脈」
インバウンド需要の回復と拡大が進む中、 海外からの旅行者が求めているのは、 単なる観光名所の消費ではなく、 その土地でしか体験できない文脈だ。
食文化、ものづくり、地域の時間の流れ。 それらはすべて「暮らし」の中に蓄積されている。
「ふるさと生活」のような生活視点の発信は、 海外の人々にとっても理解しやすく、 “なぜこの場所に行くのか”という理由を与える。
地方発信は「日常」から強くなる
小松市の取り組みが示しているのは、 地方創生において派手な演出よりも、丁寧な編集が重要だという事実だ。
日常の積み重ねを言語化し、可視化し、共有する。 そのプロセスこそが、国内の共感を生み、 やがてインバウンドという外部の視線にも届いていく。
日本の地方には、まだ語られていない物語がある。 「ふるさと生活」は、その扉を静かに、しかし確実に開く試みだ。

