「うどん県」として知られる香川県。
しかしこの地には、もうひとつの顔があります。
水が乏しい土地で生まれた「ため池文化」。
地域で学び合う“共育”という教育のかたち。
そして、観光から「関係人口」へと進化する島の試み。
足りないからこそ、支え合う。
限られた資源のなかで分け合い、つながり、未来をつくる。
本記事では、香川県・小豆島を中心に、
“分かち合う暮らし”と“テクノロジー”が交差する現場を追いました。
水がない。だから、分け合った
香川県は、日本でも有数の少雨地域です。
川が少なく、雨も少ない。
この制約のなかで生まれたのが、「ため池文化」でした。
山あいに、集落ごとに点在する無数のため池。
それは単なるインフラではありません。
水を誰が、いつ、どれだけ使うか。
それを地域全体で話し合い、守り続けるための“社会の仕組み”でした。
奪い合うのではなく、
管理で縛るのでもなく、
信頼を前提に分け合う。
この感覚は、いまも島の暮らしのなかに息づいています。

小豆島に残る「共育」という考え方
オリーブや醤油の島として知られる小豆島。
ここには、少し変わった教育の空気があります。
「教育」ではなく、「共育」。
教える人と教えられる人を分けない。
年齢や立場を越えて、
地域の中で一緒に育つという考え方です。
子どもが大人から学び、
大人が子どもから学び、
外から来た人も、また学び手になる。
足りない人材を外から補うのではなく、
関係のなかで育て合う。
これもまた、制約の中から生まれた知恵でした。

観光から「関係人口」へ─島が選んだ次のフェーズ
瀬戸内海の島々では、
観光のあり方が静かに変わり始めています。
一度来て、消費して、帰る。
そのモデルから、
何度も訪れる人。
長く滞在する人。
制作や運営に関わる人へ。
関係が積み重なる人口=関係人口へと、
視点が移り始めました。
それは、島の資源を使い切らないための選択であり、
未来へ手渡すための判断でもあります。

テクノロジーは、奪うためではなく、つなぐために
本動画では、
こうした“分かち合いの文化”の現場に、
テクノロジーがどう関わり始めているのかも追いました。
効率化のためだけではない。
管理のためだけでもない。
水を守るために。
学びを開くために。
人と人の距離を、ちょうどよく保つために。
テクノロジーはここで、
「足りなさ」を消す存在ではなく、
「分かち合い」を支える道具として使われています。

足りないからこそ、未来をつくれる
香川と島々の暮らしは、
何かを大量に持つことで成り立ってきたわけではありません。
足りない水。
限られた土地。
小さな人口。
だからこそ、人は話し合い、
譲り合い、
関係を大切にしてきました。
“分かち合う暮らし”は、懐かしい価値観ではありません。
むしろ、これからの社会に必要な、
未来のプロトタイプなのかもしれません。

編集後記|Sora
うどんの奥にあるのは、
派手さのない、けれど確かな知恵でした。
この土地で育った「足りなさとの付き合い方」は、
いま、世界が直面している課題とも、静かに重なっています。
次に香川を訪れるとき、
ため池や島の風景が、少し違って見えるかもしれません。
Youtubeチャンネル「NEOTERRAIN」と連動企画です。動画もチェック!
香川県篇

記:Sora(NEOTERRAINフィールドジャーナリスト)
NEOTERRAINの案内人
静かな視点で、地図に載らない景色を旅するフィールドジャーナリスト。
北の大地の牧場から、南の市場のざわめきまで。
人と社会の営みの中にそっと寄り添い、記憶と問いかけを言葉に残します。
この視点が、あなたの旅の地図になりますように。
