自社メディアを運用していると、広告の世界がまったく違って見えてくる。NEOTERRAIN Journalをはじめ、記事配信やYouTube連動型の運用を重ねる中で、私自身の「広告の解像度」は大きく変化した。
特に象徴的だったのは、Google広告に“わずか5万円”投じただけで、個人レベルでも確かな認知を獲得できたという実感だ。これまで「広告は資本のある企業のもの」という常識が、静かに揺らぐ感覚があった。
では、この事実を前にして、テレビCMの価値は本当に下がったのだろうか。
◆ 「価値が下がった」のではなく、「価値の種類が変化した」
多くの人は「テレビ離れ=TV CMの価値低下」と捉えがちだ。しかし、自社で広告を運用した経験から見えてきたのは、もっと本質的な変化だ。
TV CMは“認知効率”ではデジタル広告に勝てない。
5万円の広告で数万〜十数万インプレッションを獲得できる世界では、100万円のTV CM1本の費用対効果は確かに見劣りして見える。
しかし同時に、気づいたことがある。
TV CMは「信用」「格」「社会的証明」を生む力が、今でも圧倒的に強い。
◆ TV CMが今も人気であり続ける理由
① 社会的証明としての力が強すぎる
「TV CMに出ている=ちゃんとした企業」という印象は、今も変わらない。広告の世界では、これは強力な“ショートカット効果”だ。
② “大衆”に同時に届く唯一のメディア
デジタル広告はターゲット精度が高い。しかし、数百万人に一斉にリーチする力はTVにしかない。この「大衆性」こそ、いまだに企業がテレビを選ぶ理由だ。
③ ストーリーテリングの場として優れている
スキップされない、リビングで見る、音と映像の没入感。その時間を“独占”できることは、ブランドの世界観を届ける上で非常に大きい。
④ 広告業界のエコシステムが依然としてTV中心
広告賞、制作実績、社内評価軸など、広告産業のインフラがTVを中心に回っている。この構造はすぐには変わらない。
◆ デジタル広告は“狭く深く”刺さり、行動を変える
一方で、自社で運用したGoogle広告が教えてくれたのは、デジタル広告の本質的な強さだ。
- ターゲット精度が高い
- 興味のある人だけがクリックする
- 分析しながら改善できる
- 記事回遊・動画視聴・SNSフォローなど、行動が可視化される
つまり、デジタル広告は「認知の深度」を作るメディアだということだ。
5万円でTVの20〜50万円相当の認知価値を生みつつ、さらに行動変容まで誘発できる。 この点において、デジタルは確かに“個人が扱える広告媒体”として革命的だ。
◆ NEOTERRAINの文脈でとらえるなら
私はこの構造を、NEOTERRAINのフレーム「MDCA」にそのまま重ねて理解している。
■ TV CM=Mass(世界観の構築)を一気に押し上げる装置
■ デジタル広告=Direct・Content・Actionを積み上げ、行動変容を起こす装置
それぞれの役割は対立ではなく補完関係にある。
◆ では、広告の時代はどこへ向かうのか?
結局のところ、広告の本質は「人にどのように出会うか」だ。 大衆に“大きく出会う”にはTVが強い。 興味を持つ人に“深く出会う”にはデジタルが強い。
自社メディアを運用すると、この違いが鮮明に見えてくる。 そして、この二つをどう組み合わせるかがブランドの未来を左右していく。
5万円の広告運用は、単なるテストではなかった。 それはこの時代の広告構造を、肌で理解するための“実験地形”だったのだ。
NEOTERRAINはこれからも、広告やメディアの変化を「地形のように」読み解きながら、未来のコミュニケーションを探索していく。

