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失われゆく言葉を未来へ─ウチナーグチとAIの挑戦
沖縄に受け継がれてきた言葉、ウチナーグチ。琉球王国の時代には、外交や芸能、日常の暮らしの中で広く使われ、沖縄独自の文化や世界観を形づくってきました。


しかし、近代化の波はこの言葉に試練をもたらしました。明治期の同化政策で導入された「方言札」により、学校で話すことは禁じられ、戦後の米軍統治下では日本語や英語教育が広がる中で、公の場から姿を消していきます。
かつて「当たり前」だった言葉は、次第に家庭の中でしか聞かれなくなり、いまでは話者の高齢化によって消滅の危機にあります。

それでもなお、ウチナーグチを守り継ごうとする動きが生まれるのはなぜでしょうか。理由は明快です。言葉は文化の魂であり、暮らしや記憶を未来につなぐ鍵だからです。
現代の挑戦篇|AIとデジタル技術による継承
いま、Z世代とテクノロジーが新しい方法でウチナーグチに息を吹き込んでいます。
- エイサーのリズムと融合若者たちが太鼓と舞にあわせてウチナーグチを響かせる。リズムに乗せることで、言葉は再び「身体に宿る表現」として蘇ります。
- 音声合成AIネイティブ話者の声を学習させ、自然なイントネーションを再現。学ぶ人は「聞いて、まねる」体験をデジタルで手にできます。
- VR・メタバース空間仮想の沖縄集落や祭りで、キャラクターがウチナーグチを話す。観光体験と学習が融合し、言葉は“遊びながら身につくもの”になります。
- 生成AIによる創作ウチナーグチで詩や歌を生成し、現代音楽やエイサーに重ねる。単なる保存ではなく、新しい文化表現として拡張されていきます。
かつて“禁止”された言葉が、いまはアルゴリズムと太鼓のリズムに乗って未来へと響き渡る。そこには、消滅の危機を超えて「文化を創り直す」挑戦があります。


ことばと文化の未来へ
ウチナーグチを継承するということは、過去を守るだけではなく、未来をデザインすること。AIやデジタル技術は、そのための新しい器となっています。
沖縄の太鼓とアルゴリズムが交差するとき──。そこに、言葉と文化の未来を生き直すためのヒントが隠されています。

Youtubeチャンネル「NEOTERRAIN」と連動企画です。動画もチェック!
沖縄県篇

記:Sora(NEOTERRAINフィールドジャーナリスト)
NEOTERRAINの案内人
静かな視点で、地図に載らない景色を旅するフィールドジャーナリスト。北の大地の牧場から、南の市場のざわめきまで。
人と社会の営みの中にそっと寄り添い、記憶と問いかけを言葉に残します。
この視点が、あなたの旅の地図になりますように。

