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陶磁職人─文明を、焼き上げる手

中国の陶磁工房で、窯の奥に赤く燃える火と、手前に並ぶ白磁の壺。焼成を待つ器と炎の対比が印象的な風景。
中国の陶磁工房で、火の入った窯と静かに並ぶ器。土と火に委ねる陶磁職人の仕事風景。

中国の陶磁職人は、完成を支配しない。
土と火と時間に身を委ねながら、
文明そのものを形にしてきた手が、そこにある。

Contents

はじめに

器は、ただの生活用品ではない。

それがどんな土でつくられ、
どんな火をくぐり、
誰の手を経てきたのか。

中国の陶磁器には、
一つの文明が歩んできた時間が、そのまま刻まれている。

第一章|中国において、器はインフラだった

中国で陶磁が発達した理由は、
美意識だけではない。

皇帝の権威を示すため。
交易を成立させるため。
国の技術力を可視化するため。

器は、国家と社会を支える装置だった。

景徳鎮をはじめとする陶磁の産地では、
土づくり、成形、絵付け、焼成が分業され、
一つの器に無数の手が関わる。

そこにあるのは、個人の表現ではない。
文明としての制作システムだ。

第二章|完成は、火が決める

中国の陶磁職人は、
最後まで自分を信用しない。

釉薬の溶け方。
窯の中の温度差。
炎の流れ。

どれだけ経験を積んでも、
最終的な仕上がりは、火に委ねられる

だから職人は、
完璧を狙わない。

予測し、整え、準備し、
あとは自然の力を受け入れる。

中国陶磁の美は、
制御と放任のあいだに生まれる。

第三章|なぜ、中国は「委ねる」文化を選んだのか

中国の文明は、
人間が世界の中心に立つ思想ではない。

天・地・人。
人はその一部として存在する。

陶磁職人もまた、
自然を支配する存在ではない。

土の性質を読み、
火の機嫌を感じ取り、
その流れに身を置く。

それは諦めではない。
世界の構造を理解した上での選択だ。

第四章|名もなき手が、文明を残した

中国陶磁の多くは、
作者名が残っていない。

それでも器は残った。

王朝が滅び、
国境が変わり、
時代が移ろっても、

器だけは、
人の暮らしとともに生き続けた。

中国の陶磁職人が残したのは、
個人の名声ではない。

文明そのものの記憶だった。

終章|手は、文明を覚えている

日本の提灯職人は、
場を整える光をつくった。

イタリアの靴職人は、
一人の身体に向き合い続けた。

そして中国の陶磁職人は、
文明を、静かに焼き上げてきた。

職人とは、過去を守る存在ではない。

未来に、思想を渡す存在だ。

手は、文明を覚えている。

シリーズ|手は、文明を覚えている。
Vol.1 日本|提灯職人
Vol.2 イタリア|靴職人
Vol.3 中国|陶磁職人

NEOTERRAIN Journal 編集長 三宅雅之

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