夜明け前のジム。
まだ誰もいないリングに、一本の光が差し込む。
そこに立つ若者は、
自分ひとりでここまで来たわけではない。
グローブの重さ。
縄跳びのリズム。
「もう一発いけ」という声。
それらはすべて、
誰かから受け取ったものだ。
Contents
勝敗の裏にあるもの
観客は、勝ち負けを見る。
スポンサーは、数字を見る。
メディアは、ストーリーを見る。
しかしジムの中では、
別のものが受け継がれている。
それは、技術だけではない。
- 負けを受け入れる姿勢
- 礼を尽くす態度
- 努力を続ける習慣
- 諦めないという思想
ボクシングは、人格を鍛える装置でもある。

リングは社会の縮図である
格差。
機会。
リスク。
報酬。
リングの上には、社会の構造が凝縮されている。
だが同時に、
そこには「逆転」の可能性も存在する。
貧困から這い上がった王者。
地方のジムから世界に挑んだ若者。
ボクシングは、人生を再設計するための装置でもある。

継承とは、希望を渡すこと
引退した元王者が、
若い選手にミットを持つ。
敗北を知る者だけが、
本当の重みを教えられる。
リングは、一代で終わらない。
挑戦は、世代を越えて受け渡される。
ボクシングは、暴力ではない。
ボクシングは、経済である。
ボクシングは、希望である。

そして、
そして、
その拳は、ひとりのものでは終わらない。
リングに立つたびに、
技術は磨かれ、
哲学は受け渡され、
覚悟は次の世代へと静かに引き継がれていく。
ボクシングは、
勝敗の物語である前に、
人間の物語である。

ボクシングは、継承である。
ボクシングは、継承である。
それは、技術だけを伝えることではない。
敗北の受け止め方、
恐怖との向き合い方、
立ち上がるという選択。
リングの上で学んだすべてが、
やがて誰かの背中を押す力になる。
拳はぶつかる。
だが、その精神は、受け渡されていく。
NEOTERRAIN Journal 編集長 三宅雅之


