ビジネスの世界には、残酷だが否定しようのない現実がある。
「何をしている人か分からない」=「機能していない」と判断される、という事実だ。
それは努力不足の話ではない。能力の話でもない。
「役割が定義されていない」という、構造の問題である。
1. ラグビーに学ぶ、「ポジション」がない選手の末路
ラグビーでは、選手一人ひとりの役割が明確だ。
スクラムを組むプロップ、突破力のあるセンター、足の速いウィング、司令塔のスタンドオフ。
それぞれが「何ができるか」ではなく、「どの局面で使われるか」によってフィールドに立つ。
もしそこに、
「何でも頑張ります。走れますし、押せますし、考えるのも好きです」
という選手がいたらどうだろう。
監督からすれば、答えは明確だ。
「使いどころが分からない」=「戦術に組み込めない」。
ビジネスも同じである。
能力があっても、役割(機能)が定義されていなければ、評価以前に「選択肢」にすら入らない。
2. 認知コストという、見えない負債
ビジネスの相手は、常に忙しい。
判断のためのリソースは、極めて限られている。
このとき、相手に
「この人は何ができるのか?」
を考えさせてしまうこと自体が、認知コストという負担になる。
- 価値が伝わる人:「私は〇〇を解決できます」と一言で言える
- 価値が伝わらない人:「いろいろ経験がありまして…」と説明が長い
前者は即決され、後者は「あとで検討」に回される。
結果として、後者は選ばれない。
「何屋か分からない店には、誰も入らない」。
これはマーケティング以前の、人間の判断原理だ。
3. 「汗(プロセス)」は商品にならない
努力や試行錯誤、裏側の苦労は尊い。
だがビジネスで売買されるのは、それ自体ではない。
評価されるのは常に、結果として何が変わったのかだ。
・意思決定が早くなった
・売上が伸びた
・リスクが回避された
・混乱が整理された
「忙しそうにしている」ことは、価値の証明にならない。
周囲が求めているのは、アウトプットとしての変化である。
成果物が見えなければ、どれだけ優秀でも「空回り」に見えてしまう。
4. 例外としての「高度なつなぎ役」
ただし、ひとつだけ例外がある。
それは、
「一見、何をしているか分からないが、いないと回らない人」だ。
優秀なプロデューサー、調整役、編集者、ファシリテーター。
彼らは実作業をしていないように見えるが、実際には重要な価値を生んでいる。
重要なのは、彼らが自分の価値を“機能として”定義できている点だ。
- 意思決定を早める
- トラブルを未然に防ぐ
- 異なる専門家同士を接続する
- プロジェクト全体の失速を防ぐ
玄人の決裁者は、ここを見ている。
「何をしているか分からない」のではなく、「何を起こしているか」を見ているのだ。
結論|ラベルのない価値は、流通しない
ビジネスというフィールドでは、次の現実から逃れることはできない。
「ラベル(肩書き・機能)のない商品は、棚に並べられない」
REALな価値を持っていたとしても、それが
相手にとって使いやすい形=機能として翻訳されていなければ、存在しないのと同じだ。
価値とは、主張するものではない。
使われて初めて、価値になる。
自分は「どのポジション」で、
「どんな局面の課題」を、
「どう変える人間なのか。
その一行が言えない限り、
フィールドに立つことは許されない。

