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モロッコ自転車旅行記 1995年

モロッコの砂漠地帯をまっすぐに伸びる一本道と、夕陽に染まるアトラス山脈の風景。旅人が感じた“灼熱の大地と人の温度”を象徴する情景。
モロッコ砂漠地帯(イメージ)

初めての海外旅行は、灼熱の太陽が照りつけるモロッコだった。意気揚々と日本を飛び立った僕の計画は、マウンテンバイク(MTB)でこの異国の大地を一周するという、少々大胆なものだった。

モロッコの砂漠地帯を、自転車に荷物を積んで走る旅人たち。荒涼とした大地と遠くの山並みが広がる中、仲間同士が手を挙げて進む風景。
モロッコの荒野を、仲間とともに走り抜けた日々。乾いた風と果てのない道が、旅を自由にしてくれる。

サハラ砂漠の縁までは順調だった。どこまでも続く砂の景色に、地球の雄大さを感じ、胸が高鳴った。しかし、旅の道連れである先輩の体調が思わしくなかった。無念ではあったが、アトラス山脈を越えるのは断念し、マラケシュへと向かうことにした。それでも、異文化に触れた初めての経験は、僕にとってかけがえのないものだった。

帰国後、妙に日本の街並みが無機質に感じられ、何でも揃っているコンビニにさえ、しばらくの間、違和感を覚えたほどだった。あの鮮やかな色彩と喧騒が、今でも鮮明に蘇る。

広大な砂漠の砂丘を歩く一人の旅人と、その背後に続く足跡。朝陽に染まる砂丘が広がる、旅の記憶を象徴する風景。
朝陽に照らされた砂漠を進む旅人。静けさの中で、足跡だけが物語を刻んでいく。
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カサブランカ近郊のキャンプ場で出会った、忘れられない温もり

マラケシュからさらに北へ、カサブランカから間もない小さなキャンプ場にテントを張ることにした。そこで出会ったのは、親切なキャンプ場の主人だった。言葉はあまり通じなかったけれど、彼は身振り手振りを交え、僕たち3人を気遣ってくれた。

近くの村を案内してくれたり、夕飯を一緒に囲んだり。路上で買ったばかりの素朴なパンが、驚くほど美味しかったのを覚えている。翌日、自転車に寝袋や食料などの荷物を積み込み、温かいもてなしを受けたキャンプ場を後にした。次の目的地を目指し、ペダルを漕ぎ出した。

埃っぽい道での出会い─言葉が通じなくても、人はつながる

カサブランカから首都ラバトへと向かう途中、舗装されていない埃っぽい道で、5人組の男たちに声をかけられた。

「どこから来たんだ?」「自転車でモロッコを回っているのか?」

彼らは興味津々で、様々な質問を投げかけてきた。記念写真を撮ろうということになり、彼らの簡素な荷台に遠慮しながらも腰掛け、ぎこちない笑顔でカメラに収まった。

別れ際、彼らは力強く僕の手を握りしめた。言葉は通じなくとも、心が通じ合う瞬間がある。旅の出会いは、本当にかけがえのない財産だと、改めて感じた。この写真はいまだに、僕の部屋の壁に飾ってある。あの時の温かい気持ちが、色褪せることなく蘇ってくるからだ。

乾燥地帯の道路脇で、旅人のグループと現地の男性たちが笑顔で集まっている様子。トラックの荷台に立つ若者と、地元の人々が共に写る旅の交流シーン。
旅先の道ばたで出会った人々。言葉より先に、笑顔と空気がつながっていく瞬間。

名もない小さなユースホステルで見た、人生の夕陽

ラバトを抜け、メクネス方面へと続く、緩やかな上り坂をひたすら漕いでいた。日差しが強く、汗が額から流れ落ちる。疲労の色が見え始めた頃、道の脇にぽつんと佇む小さな町のユースホステルを見つけた。

入り口の扉は少し軋んでいたけれど、温かい光が漏れていた。宿の主人らしき恰幅の良い男性が、笑顔で僕たちを迎えてくれた。

「ユースホステルか? 俺も昔、旅が好きでね」

部屋は決して綺麗とは言えなかった。壁には染みがあり、ベッドも少し古びていた。しかし、窓から見える夕陽は、まさに絶景だった。オレンジ色に染まった空と、遠くに見える山並みが、まるで一枚の絵画のようだった。

汚い部屋だなんて、そんなことはどうでもよかった。ただ、その夕陽を眺めているだけで、心が満たされていくようだった。「1ヶ月もいるよ」宿の主人はそう言って笑った。その言葉が、やけに心に残った。

計画通りにいかなくても、旅は人生を豊かにしてくれる

ガイドブックには決して載っていない、名もない小さなユースホステルでの、忘れられない夕暮れ。異国の地で出会った人々の温かさ、予期せぬ美しい風景。それらはすべて、僕の心に深く刻まれ、その後の人生を彩るかけがえのない宝物となった。

初めての海外旅行は、計画通りにはいかなかったけれど、それ以上の何かを僕に与えてくれたのだ。

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