「風の中で考える」─あの頃の自転車旅が、台湾のスローツーリズムとつながった
学生時代、テントと寝袋を積んだ自転車で旅をしていた。
モロッコの乾いた風、オーストラリアの果てしない道、そして北海道・東北・四国・伊豆半島・三浦半島・房総半島。
どの道も、風景と自分の身体だけが確かで、ペダルを踏むたびに世界がゆっくりと広がっていった。
そんな記憶があるからこそ、今回発表された台湾・参山エリアの「自転車で巡るスローツーリズム」の構想は、強く心を惹きつけた。
身体で“土地の記憶”を読む旅へ─台湾・参山国家風景区の提案
台湾の交通部観光局・参山国家風景区管理処は、台湾中部に位置する獅頭山、梨山、八卦山の「参山(さんざん)」エリアで、自転車で巡るスローツーリズムを推進している。
参山管理処では、健康志向でゆったり旅をしたい人におすすめのサイクリングモデルコースを3つ紹介。
預約不要で、駅前のレンタルサイクル「U-Bike」が利用でき、手ぶらで旅を始められる手軽さも魅力だ。(引用元:PR TIMES)
出典:PR TIMES(台湾交通部観光局・参山国家風景区管理処)
紹介されているコースには、客家文化が色濃く残る獅頭山エリア、湖や山の眺望が美しい鯉魚潭ルート、古い郵便局や街並みが風情を残す霧峰の集落など、
「スピードを落とすことで見えてくる」土地の記憶が点在している。

かつての旅と、いま可能になる「第二の旅」
当時の自転車旅は、地図を折り畳み、風向きを読み、野宿の場所を探し、天候と会話しながら進む日々だった。
それは「移動手段」ではなく、むしろ“自分の生き方を確かめる作業”に近かった。
一方、台湾・参山の旅は、もっと軽やかだ。
荷物なしで、環境負荷が少なく、地域の文化に深く触れられる「現代の自転車旅」として提案されている。
自分があの頃に感じていた自由さや孤独、そして静かな高揚感。それらを、現代的な文脈でアップデートしながらもう一度味わえる気がする。
サステナブルな旅は「軽さ」から始まる
今回の発表の根底には、観光の低炭素化や地域文化の保全といったサステナビリティの視点がある。
自転車なら、CO₂排出は最小限。
スピードが遅いからこそ、地域にとって“通り過ぎられない”存在になる。
土地の文化、風土、人との距離も自然と近づく。
旅のあり方が消費から共感へとシフトしていく中で、こうしたスローツーリズムは、次の世代の“旅のスタンダード”になるかもしれない。
NEOTERRAIN 的視点─旅は「問いを持ち歩く行為」
NEOTERRAIN が重視しているのは、いま目の前にある「現場」と向き合い、そこにある声や営みを丁寧に拾い上げる姿勢だ。
自転車旅はまさに、その哲学に近い。
台湾・参山でのサイクリングは、観光地を“消費する旅”ではなく、自分の身体と言葉で土地を読む旅だと感じる。
走るたびに、目に映るものが「地図」から「物語」へと変わっていく。
最後に─あなたは、どの景色を、どの速度で走りたいですか?
かつての旅が教えてくれたこと─“速度を落とせば、見えるものが変わる”。
台湾の参山でのスローツーリズムは、その感覚を思い出させてくれる。
次の旅は、荷物を減らし、速度を落とし、風の音に耳を澄ませるところから始めたい。
あなたなら、どの景色を、どんな速度で走りますか?

