Morabeza─「優しさ」を社会のインフラにする文化
カーボベルデを訪れた人がまず感じるのは、島の空気に染み込んだ “ゆるやかな善意” です。
これこそが現地の人々が誇る文化概念 Morabeza(モラベザ)。単なる「優しい接客」ではなく、
・相手の存在を受け入れる姿勢
・急がず、焦らず、尊重するタイム感
・自然や他者との距離を大切にする島の倫理
といった、社会の基層にある“関係性そのものの豊かさ”を指します。
Morabeza は観光業のキャッチコピーではなく、人びとの暮らしに根づいた生態的な文化。そのため、表層的な「おもてなし」ではない強度をもち、市民、観光、移住コミュニティ、海外との協働関係にまで浸透しています。
観光復活と「モラベザ経済」の台頭
引用元:Outlook Travel Magazine「Cabo Verde Tourism Insights」
2024〜2025年にかけて、カーボベルデは観光が急回復し、来訪者数・宿泊日数ともにパンデミック前を大きく上回りました。
この背景には単なるプロモーションではなく、Morabeza を核にした「関係性の価値」を前面に出す観光戦略があります。
- 高級リゾートではなく「安心」「共生」「人との距離」を売りにする旅設計
- ローカル文化体験、コミュニティ滞在型ツーリズムの増加
- 欧州中心の「都市過密からの逃避需要」へのフィット
- 治安の良さ・平和性が作り出す心理的安全性
観光の回復は、文化的ホスピタリティが「経済価値」に転換する象徴的な出来事となっています。
レジリエンスと成長─「優しさ」は持続可能性の条件になる
引用元:World Bank「Cabo Verde Economic Update 2025」
世界銀行の最新レポートによると、カーボベルデは以下の脆弱性を抱え続けています:
- 気候変動の影響(干ばつ・洪水)
- 観光産業への依存度
- ジェンダー・雇用格差
しかし同時に、同国は「包摂性とレジリエンスを融合させた成長モデル」として高く評価されています。
その理由のひとつに、Morabeza の文化がコミュニティ連帯を強化し、復旧や協働に強い土台を生んでいることが挙げられます。
- 災害発生後の地域支援が迅速で横断的
- 女性の社会参画の増加(観光・公共・教育セクター)
- 外部機関(NGO・国際機関)との協働受容性
小国であることは弱点ではなく、社会的結束が強ければこそ、“優しさがレジリエンスになる”という新しいモデルを提示しています。
デジタルで広がる Morabeza─5G国家戦略とテック政策
引用元:Tech Africa News「Cabo Verde Launches National 5G Strategy」
2025年、カーボベルデは「国家5G戦略」を発表し、2030年までに「大西洋のデジタル・ハブ」を目指す方針を明確にしました。
このデジタル化の動きには、Morabeza の文化が持つ“柔らかな受容性”が影響していると分析されています。
- 市民が新技術に抵抗しにくい文化性
- ポルトガル語圏ネットワークを活かしたスタートアップ育成
- 観光×デジタル(安全・移動・決済・案内)のインフラ整備
文化的ホスピタリティと技術革新が結びつくことで、
“小国ゆえの機動力を活かした未来都市モデル”としてのポテンシャルが浮かび上がります。
Morabeza が示す未来像─「空気の質」こそ地域資本になる
世界が「効率」「スピード」から「関係性」「安心」「信頼」へと価値シフトする中、
カーボベルデの文化 Morabeza は、地域が持つ“空気の質”が未来の経済資本になり得ることを示しています。
NEOTERRAINは、この“小さな優しい国の実験”を、
日本の地域づくり、観光再生、地方創生の未来像として読み解いていきます。
References
- Outlook Travel Magazine – Cabo Verde Tourism Insights
- World Bank – Cabo Verde Economic Update 2025
- Tech Africa News – Cabo Verde National 5G Strategy
- Copernicus EMS – Flood Events in Cabo Verde 2025
- Travel and Tourism World – Cabo Verde Eco-tourism Features

