スーダン内戦が2年半以上続く中、子ども・妊産婦・避難民を中心に、深刻な栄養危機が広がっています。現地で医療活動を行う国境なき医師団(MSF)は、援助妨害の停止と、すべての人道支援スタッフの安全なアクセスを強く求めています。
スーダンで“栄養危機”が急拡大
2023年4月に始まったスーダン軍(SAF)と準軍事組織RSFの内戦は、生活基盤を破壊し、多くの住民を避難へ追い込みました。 北ダルフール州・エル・ファシールからタウィラに避難した人びとを対象にMSFが実施した調査では、以下の深刻なデータが示されています。
- 5歳未満の子ども70%以上が急性栄養失調
- 35%が重度急性栄養失調
- 成人の60%が急性栄養失調
- 37%が重度急性栄養失調
タウィラに逃れた住民の多くが「500日以上包囲され、食料入手がほぼ不可能だった」と証言しており、MSFは「飢きんがすでに広範囲で進行している」と警鐘を鳴らしています。
市場の崩壊と“食料の高騰”が追い打ちに
紛争が長期化する中で、市場・物流インフラも破壊され、食料価格が異常な水準にまで高騰しています。
「空腹に耐えられず、家畜のえさを食べるしかなかった」─避難民女性
報告によると、砂糖1 kgは13万スーダンポンド(約8,400円)に達し、家畜飼料(アンバス)はわずか数カ月で2万→5万スーダンポンドへ急騰。 食料供給が途絶えた地域では、住民の多くが最低限の栄養すら摂れない状況です。

子ども・妊婦への影響が特に深刻
スーダン全土でも、子どもや妊娠中・授乳中の女性の栄養状態は急速に悪化しています。
- MSFが行った産前ケア6,500件のうち半数の妊婦が急性栄養失調
- 重度急性栄養失調は15%
- 今年、青ナイル州の病院で1,950人の重度栄養失調の子どもを治療
- 100人以上の死亡が確認
南スーダンからの帰還民流入でキャンプは過密状態となり、 衛生環境の悪化 → コレラ流行 → 栄養失調の悪化 という悪循環が続いています。
MSFの警告:今必要なのは「安全なアクセス」
MSFは、紛争当事者に対し次の点を強く求めています。
- 人道支援活動への妨害を直ちに停止すること
- 医療・支援スタッフが安全に移動できる環境を保証すること
- 食料・水・衛生サービスを緊急に届けられる仕組みを確保すること
現地の飢きんは、報告されているだけでも重大ですが、支援が届かない地域ではさらに深刻である可能性が高いとされています。

NEOTERRAIN視点:これは“数字の問題”ではなく、“構造崩壊”の問題
今回の栄養危機は、単に食料不足だけではなく、以下の複合要因から生まれています。
- 生活基盤の破壊(家・農地・市場の喪失)
- 物流の断絶(物資が届かない)
- 価格の暴騰(市場が機能しない)
- 医療アクセスの欠如
これは“ひとつの課題”ではなく、社会の基盤が多層的に崩れていく「構造危機」です。 最も影響を受けるのは、子ども・妊産婦・難民─脆弱な立場の人たちです。
引用元
本記事は以下プレスリリースを基に再構成しています。
国境なき医師団(MSF):「スーダン内戦 深刻な栄養危機」(PR TIMES)

