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1) ファクト:過熱を生む要因
利用規模:2025年1月時点でSNSユーザーIDは9,080万(人口の78%)、ネット利用は9,750万(84%)。オンライン滞在は8時間52分/日と世界中央値を大きく上回る[1][2]。
プラットフォーム動向:Facebook/TikTok/YouTubeが強く、TikTokの成人到達は約2/3との推定[2]。
決済と資本:GCashは登録9,400万超。運営MyntにはAnt Group/Ayala/Globeが出資、三菱商事も持分取得。競合Maya(旧PayMaya)はデジタルバンク化後に黒字化し、グローバル投資家が関与[3][6]。
ライブコマース:Shopee Liveは2024年に視聴120億回。9.9セールでは視聴時間110万時間、中小事業者の販売1,100万点[4]。ローカル配信Kumuは日次2.5万配信・登録300万規模[7]。
2) 若者文化:等身大の仕事と創作
サリサリストア × ライブ販売
街角の小店舗がスマホ一台で配信→コメント受注→GCash/Mayaで決済→当日配送。薄利でも回転率とフォロワーが支える“超ローカルDX”[6]。
音楽・ダンスの拡張
短尺はTikTok、長尺はYouTubeで“物語化”。Budotsの再評価に見られるように、ローカルが越境し、イベント集客・スポンサー獲得へつながる母集団を形成[5]。
クリエイターの職能化
Kumuでは企画・司会・編集を自前で回し、ギフティングが収益に直結。日々の配信が“練習の場”として機能し、新規参入のハードルを下げている[7]。
3) リスク:光の裏側
- 偽情報・世論操作:Reutersの調査報道では、ドゥテルテ氏関連の称賛投稿の約1/3、選挙関連の最大45%が偽アカウント関与とされる[8]。
- オンライン安全:UNICEF Philippinesは、若者の85%超が“安全でない経験”に直面と報告。オンライン搾取は国家課題[9]。
- メンタルヘルス:長時間利用と自己評価・身体イメージの歪みの関連が指摘され、10代女子で顕著[10]。
4) どう活かす:実装アイデア
- リテラシーの標準化:学校・自治体でデジタル市民教育を必修化。動画末尾に「出典3点確認」と「生成・編集の開示」テンプレを常設。相談窓口(UNICEF等)をCTAで明示[9]。
- 若者×商店×金融のメッシュ化:ライブ販売はShopee Live、決済はGCash/Maya、在庫・与信は地場金融──回転率KPIで運用改善[4][6]。
- 透明性のルール:政治・社会テーマは広告・協賛の明示、AI・編集の開示、一次データへのリンク(DataReportal/Reuters等)を台本に組み込む[1][8]。
総括すると、フィリピンの若者はSNSを「消費→制作→商い→市民参加」へ拡張中。決済(GCash/Maya)と配信(TikTok/YouTube/Kumu/Shopee Live)の重なりが、地域の所得機会と参加機会を同時に押し上げている[3][4]。
参考・出典
- DataReportal – Digital 2025: The Philippines
- Meltwater – Social Media Statistics in the Philippines (2025)
- Fintech Magazine – GCash: The Rise of a Financial Super App
- Inquirer Business – Shopee 9.9: 11 million items sold (livestream/affiliate)
- DataReportal – Digital 2024: The Philippines
- GCash – About Us
- Wikipedia – Kumu (social network)
- Reuters – Fake accounts and Philippine election
- UNICEF Philippines – Young people speak out on online safety
- Spiralytics – Social Media in the Philippines (2025)

